【次に流行るもう一曲】
YUKI「tonight」

ソロ転向後13年を経ても進化は止まらない

伊藤 2曲目は、JUDY AND MARYの元ヴォーカリスト・YUKIの29枚目のシングル「tonight」。JUDY AND MARYのデビューから数えると22年のキャリアの彼女、ソロになってからも13年が経つんですね。いつまでたってもオーガニックな可愛さをもったアーティストです。

山口 最近渋谷駅に、YUKIのコンサートの大きなポスターがあるのですが、相変わらずカリスマのオーラが出てるなと、毎朝通る度に思います。

伊藤 もう10年前になるけど「JOY」を発表したとき、それまではバンドサウンド中心だったのに、エレクトロなサウンドに振り切ったのを聞いて、YUKIは進化を続けるアーティストなんだなぁと思いました。その前作「ハローグッバイ」だってヒットしていたから、「JOY」を聴いて、あれ? って思った人も多かったはず。でも今では「ハローグッバイ」と並んで「JOY」も彼女の代表作ですからね。同じくらいの時期からですよね、製作をagehaspringsとがっつりタッグを組んでいるのは。その辺のこと、ageha代表の玉井健二さんから面白い話は聞いていませんか?

山口 YUKIのソロ活動は、玉井さんにとってもプロデューサーとしての代表作ですよね。医者が患者の話をしないように、アーティストの話をすることはないですけれど、彼女と向き合うのは、エネルギーが要るだろうなぁと思います。でも、音楽のスタッフって、才能あるアーティストに振り回されたい願望があるんですよね。先日の真鶴の「クリエイターズキャンプ」(外部サイト)に、元JUDY AND MARYのTAKUYAが参加してくれたのですが、運営スタッフが嬉しそうに振り回されていました(笑)。あの2人のいたバンドのスタッフは本当に大変だっただろうな。

伊藤 たしかに(笑)。

山口 いつの間にかいなくなったと思ったら、沼津の知り合いの所まで行って、プログラマーのみんなにシラスの差し入れをもって帰って来てくれました。みんな、びっくりしてたけど、めちゃくちゃ美味かった(笑)。

伊藤 今回の「tonight」も詞はYUKIだけど、曲はAlbatoLuceという殆ど無名のアーティストの曲を採用している。どんな経緯があったかはわからないけど、こういうところもYUKIの進化の一部なんだと思う。

山口 映画『グラスホッパー』の主題歌なんですよね。原作の伊坂幸太郎は好きです。以前、『陽気なギャングが地球を回す』の音楽プロデュースをやらせていただいた縁もあり、是非、観に行きたいです。

YUKI「tonight」
エピックレコードジャパン 2015年11月4日発売
初回生産限定盤[CD+DVD]1,574円、通常盤[CD]1,111円(税抜)
■YUKIは、1993年にJUDY AND MARYのヴォーカリストとしてデビュー、2001年のバンド解散の翌年、ソロ活動を開始した。現在、4カ所7公演のアリーナツアーの真っ最中。このシングルの表題曲は、生田斗真、浅野忠信、山田涼介らが出演する映画『グラスホッパー』の主題歌。日本屈指の名プレイヤーが集結し、すべての楽器を生演奏している。
■「tonight」作詞/YUKI 作曲/AlbatoLuce 編曲/YUKI、玉井健二、百田留衣
■オフィシャルサイトURL http://www.yukiweb.net/

【動画サイト】
「tonight」

URL https://www.youtube.com/watch?v=V6G2L0smd40

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、音楽プロデューサー・コンテンツビジネスエバンジェリスト。
「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動も始める。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズ。プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど次世代の育成にも精力的に取り組んでいる。異業種横断型のプロデューサー。著書に『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法・コーライティングの教科書』(リットーミュージック・共著)、『とびきり愛される女性になる~恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行っていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 ~起業という選択~』(スペースシャワーブックス)『プロ直伝!職業作曲家への道』(リットーミュージック)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略~“音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス~』(リットーミュージック・共著)、『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本 』(ダイヤモンド社・共著)がある。
Twitter@yamabug https://twitter.com/yamabug
ブログ「いまだタイトル決めれず」 http://yamabug.blogspot.jp/
作曲家育成セミナー「山口ゼミ」 http://www.tcpl.jp/openschool/yamaguchi.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
http://www.mago-dai.com/?p=778

Column

来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤

音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

2015.10.30(金)
文=山口哲一、伊藤涼