上京を控えた若者の心象風景を描いたナンバー
伊藤 さて、そんなで今回は4月にメジャーデビューするロックバンド、きのこ帝国です。何はともあれ、“きのこ帝国”って……バンド名にやられましたね。どうやったらこの名前を付けようと思うのか? 何かしらの“思想”を持ってそうな、何も考えていなそうな(笑)。でも、好きだなぁ、こんな感じ。
山口 バンドへの注目からは、元ジャニーズエンターテイメントのプロデューサーというよりも、アメリカ留学前のギター少年の心を感じますよ(笑)。
伊藤 (笑)。それにしても最近、男女MIXロックバンドって増えましたよね。昔から女性ヴォーカルのポップバンドっていうのはあったけど、最近は女子が中学くらいから楽器を持ちはじめ、ギャルバン組んで、その中から実力派は男子とバンド組んでいくみたいな流れがあるんですかね? きのこ帝国もギターとヴォーカル&ギターが女子ですね。
山口 昔はバンドの中の女の子って、ヴォーカルじゃなければ、キーボードっていうのが定番でしたけれど、最近は、ドラムとかベースとかの男女混合が増えましたね。音楽的には面白いことが起きる可能性が広がるので良いことですよね。
伊藤 ですね。そのせいなのか、きのこ帝国のサウンドはあまり作り込み過ぎないようにしている感じで、ヴォーカルの繊細な声が浮き出ている感じ。音楽以外のことで、このサウンドを表現すると「文学少女みたいなロックバンド」ですね。
山口 この連載を始めて思ったのですが、伊藤さんは文学少女が好きでしょう? ビジュアルや普段の仕事からは、ちょっと意外ですが、清楚な文学少女好きの青年の姿が「妄想」できますよ(笑)。
伊藤 とくに好きってわけでもないですが、文学少女からはよく告白されましたね(笑)。歌詞の内容は、ヴォーカリストが盛岡出身で、東京に出てきて10年経ったらしく、盛岡での思い出と当時の未来に馳せる想い。超ザックリと言ってしまえば卒業ソングだけど、あまり前向きとはいえない。もう18歳で、どんどん輝くものを失っていて、そして未完成で、だけど歩いていかないといけない。
山口 そうですね。「18歳はもう若くない」と焦っているところに、若さを感じます。素敵な歌詞です。
伊藤 夢をもって上京する若者という、リアルタイムでもノスタルジーでもいいんだけど、多くの人が共感できる内容。そして、きのこ帝国ならではの世界観が、不思議な場所に連れて行ってくれる。
2015.04.14(火)
文=山口哲一、伊藤涼