音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
androp「Ghost」

佐村河内事件を思わせるドラマ「ゴーストライター」の主題歌

山口 まず、最初に宣伝させてもらいましょう。伊藤さんと私の共著『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングに学ぶ魔法のフレーズ』(外部サイト)が、3月2日に発売になります。

伊藤 この2人で恋愛本って……、衝撃に思われるかもしれないですけど(笑)。でも、素晴らしいJポップの歌詞から、ラブソングの心震わせるところを読み解き、皆さまに伝えるってことだから、基本的にはここでやっていることに近いですね。ただ、恋愛に特化しているというだけ。

山口 勢い余って、「ラブソングラボ」(外部サイト)まで作ってしまいましたね。

伊藤 これで僕らはラブソング研究家ってとこ(笑)。まぁ、ヒットしているJポップの多くはラブソング、それだけ求められているってこと。この本を書くにあたってラブソングをかなり研究しましたが、なかなか奥の深いものだと再確認しました。もっともっと良いラブソングが世の中に出ていくように研究を続けていきたいです。

山口 この本で紹介している48曲の歌詞の一部分、「魔法のフレーズ」をコラージュ的に組み合わせてオリジナル楽曲を作るというのにも挑戦したので、そちらも是非、聴いてほしいです(外部サイト)。

伊藤 「なんていうかさ」と「UNDO」の2曲をプロデュースしました。どちらも素晴らしい研究結果なので、こうやって発表できることは嬉しい。とにかく濃いラブソングになっているんで、ぜひ聴いてみてください!

山口 作曲家チームでボーカルも含めて、楽曲を完成させて、配信リリースもしています(外部サイト)。ご意見、ご感想など伺いたいです。

伊藤 さて、今回紹介するのは、バンド2本立て。まずはandropの「Ghost」なんですけど、フジテレビ系ドラマ「ゴーストライター」の主題歌になっています。実は、このドラマは内容的に面白そうだなって思って何回か観ました。天才小説家とそのゴーストライターの人間模様が面白い。なんといっても音楽業界にも関係ない話じゃないですしね。

山口 話題をさらった「佐村河内事件」も参考にしていると言われているドラマですよね? 「共作」や「盗作」というのは、音楽家にとってもシビアな問題ですが、伊藤さんは、あの事件は、どのように見ていましたか?

伊藤 ありそうな話だなって、少しも驚きませんでしたよ。どんな音楽ジャンルにおいても、昔から繰り返されてきたことですし、いままで沢山似たようなことは見聞きしてきました。音楽業界って夢や希望のあるところですが、その反面には欲望や嫉妬などドロドロしている陰の部分も間違いなくありますからね。それに、複数人で創作することっていうのは、必ずそういうストーリーを生むものなんじゃないですか。

山口 耳の障害が詐称かどうかということもあって、スキャンダラスな話題になってましたね。残念でした。「佐村河内守」は新垣さんと二人でつくったものなのです、と会見できれば良かったんですが。漫画家だと藤子不二雄さんという例がありますよね。共作のベースには、互いへのリスペクトと信頼関係が大切ですね。

伊藤 ですね。

2015.02.28(土)
文=山口哲一、伊藤涼