古都キャンディの夕陽に感激、最後にほろり

満月の日(ポヤデー)にお祈りを捧げるために仏歯寺に集まった人々。

 最後に訪れたのはスリランカの古都キャンディ。仏陀の歯が収められているという仏歯寺「ダラダー・マーリガーワ寺院」があり、仏歯の入った祠を背に載せたゾウが行列で歩くペラヘラ祭りでも有名だ。

キャンディアン・ダンスで、神に祈りを捧げるプージャーの踊り。

 キャンディアン・ダンスという伝統のダンスは見逃せない。ものすごく賑やかな太鼓とシンバルの音で始まり、民族衣装の踊り、動物に扮したもの、バック転もあるアクロバティックなものや皿回しが入るものなど次々に芸能が繰り広げられる。

最後のファイヤーダンス。近づくと熱いぐらい。

 そして、最後はファイヤーダンス。松明の火を口に入れたり、火をつけて焼いた石の上を歩いたり、かなりの見応えで楽しめる。

 終演は、ちょうど夕方。シアターの外に出て見ると、キャンディ湖を信じられないくらい美しい夕陽が染め上げていた。

青から紫へ、キャンディ湖を染めていく夕陽は、神秘的なまでに美しい。

 ポヤデーと呼ばれる満月の日は神に祈りを捧げる日なので、前日の夜からスリランカではホテルも含めて禁酒になり、お酒も売られていない。

 実は、旅の間アラックというスリランカのココナッツの蒸留酒を探していたのだが、なかなか買える機会がない。ガイドさんに「見つけられるかな」とずっと尋ねていたが「用意しましょう」といいながら、このポヤデーの日を迎えてしまって、もう帰国日だ。空港までのバスに乗って「無理か」と思ったその時、バスがちょっと止まったと思ったら、なんとガイドさんの家族がどこから見つけて来たのかアラックを持って現れた。

私が探していたアラックはV.S.O.A.(ベリースペシャルオールドアラック)という最上級のもの。心して味わった。

 基本的にスリランカの人はあまりお酒を飲まないし、彼は自分は飲まないと言っていたのにどうやって……。「私は仏教徒だから嘘はつけないんです」。ものすごく苦労して手に入れたに違いないアラックを手に静かに微笑むのだった。

 史跡や風景やさまざまに驚きや感激のあったスリランカ。さらに私が今も心に残っているのは、約束を守った彼が最後に言ったこと。

 「スリランカは素晴らしい国です。若い時はお金を稼ぐのに海外にどんどん出て行く若者も年を経ると戻って来る。なぜって? スリランカにいると足るということを知るんです」。心に染み入る不思議な魅力のある旅だった。

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2015.01.20(火)
文・撮影=小野アムスデン道子