世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第70回は、多民族の文化が花開く中米グアテマラで、芹澤和美さんがマヤ族の家庭を訪問します。

世界遺産アンティグアの郊外にある家庭へ

グアテマラのシンボルともいえるマヤ族の美しい民族衣装。特別なときだけのものではなく、いつも着ている日常着だ。

 外国取材では、美しい景色や世界遺産、おいしい料理を体験するのも楽しみだけれど、もっとも異文化を感じることができるのが、「お宅訪問」。ご縁あってお邪魔させていただいたなかでも、強く心に刻まれているのが、6年前に訪れたグアテマラのマヤ族のお宅だ。

 訪ねたのは、世界遺産でもある古都アンティグアの郊外、サントアントニオ・アグアス・カリエンテ村にある、カクチケル族のイレーネさん宅。ちなみに、カクチケル族というのは、先住民であるマヤ族の支族のひとつ。マヤ族にはほかに、キチェ族、ツトゥヒル族などがいる。マヤ族というと少数民族のイメージが強いが、この国に暮らす民族の約半数がマヤ族。次いで、メスティソ(主にマヤ族とスペイン人の混血)やガリフナ族などがいるグアテマラは、多民族・多文化国家でもあるのだ。

左:アンティグアの街から見える、富士山によく似たアグア火山。その向こうにサントアントニオ・アグアス・カリエンテ村がある。
右:村に向かう途中に、マヤ族の人々の共同洗濯場が。

 当時、イレーネさんの自宅は、息子さん家族との二世帯住居。敷地の中には、竹を組んで造ったイレーネさんの離れと、息子さん夫婦とお孫さんが暮らす日干しレンガ造りの家、そして鶏や犬や猫が自由に闊歩する小さな庭があった。

左:たいてい、どの家にも小さな畑があって、とうもろこしと豆は自給。イレーネさん宅では、オレンジ、レモン、ビワなども育てていた。
右:キッチンは家の中に造らないのが一般的で、外に洗濯槽と食器洗い場がある。

2015.01.27(火)
文・撮影=芹澤和美