世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第63回は、大沢さつきさんが、セイロンティーの知られざるディープな世界についてレポートします。

スリランカ屈指の紅茶ブランド「ディルマ」のセミナーへ

セイロンティーは、産地の標高で3つに区分される。ハイグロウンティー、ミディアムグロウンティー、ロウグロウンティーといった具合。ここは高産地ヌワラエリヤ地区の茶畑で、一年中収穫されるが、冬摘みの春茶がベストといわれる産地だ。

 スリランカ取材には行ったものの、2014年12月10日発売のCREA Travellerではなかなか本場セイロンティーについてをご紹介しきれなかった。ちょうど先月の11月、シャングリ・ラ ホテル 東京で「ディルマ」の紅茶セミナーが催されたので、そのときの様子とあわせて、今一度、セイロンティーの世界をご紹介しよう。

お茶の花。茶葉ばかりが耳目を集めるお茶の木だが、じつは花も可憐でキュート。

 「ディルマ」はスリランカ屈指の紅茶ブランドで、はじめて純セイロン産にこだわった製品を世に出した。現在、世界100カ国以上に150種類以上ものお茶を提供しているグローバル企業だ。紅茶文化の裾野を広げるべく、さまざまな取り組みにチャレンジしている。

「ディルマ」創業者のメリル・J・フェルナンド氏の次男、ディルハン氏。会社名は、彼ともうひとりの息子マリクにちなんで、名づけられた。

 今回のセミナーもそんなチャレンジの一環。一年のごく限られた短い期間のみに収穫される“シーズナル・フラッシュ=究極の紅茶”の発表と、紅茶に合わせた食事の楽しみ方が披露された。

今回紹介されたウバ・ハイランズ農園とトトゥラガーラ農園の“シーズナル・フラッシュ”。年間約50~500キロしか収穫できない紅茶だが、年によっては30キロも採れないことがあるとか。たいへん貴重な紅茶で、なかなか口にするのは難しい。

 まず、日本では聞きなれないシーズナル・フラッシュについて。スリランカは年間を通じて温暖なため、一年中茶葉の収穫が行われる。だが、その中でも風向きと強さ、日照時間、土壌の質など、すべての条件が整ったときに、稀なる強い個性の紅茶が収穫される。年によっては全く収穫できないこともあるのだとか。幸い2014年は豊作で、ウバ・ハイランズ農園とトトゥラガーラ農園(オーガニック)の2つのシーズナル・フラッシュが採れた。

ずらりとディスプレイされた「ディルマ」のお茶。水色だけでもこんなに違うのか! ということがよく分かる。

 さて、そのお味はというと。トトゥラガーラ農園のものは淡い水色(すいしょく)で、わずかにフルーティーな香り。かすかな渋みをもったエレガントな紅茶だった。わずか50キロの収穫とのこと。とても貴重な紅茶だ。

 一方のウバ・ハイランズ農園のものは、より濃い水色で、清々しい香り。軽やかな味は、とてもバランスのいいものだ。このウバのシーズナル・フラッシュは、2014年最高のセイロンティーといえる素晴らしいものだそうで、約500キロが採れたという。

2014.12.09(火)
文・撮影=大沢さつき