狂気を表現した演技に憧れる

――初主演映画を経験したことで、心境の変化はありますか?

 今回、第一線で活躍されている方たちとお仕事をさせていただいたことで、この仕事をやり続けたいと思いました。そのためには、さらに努力をしなければならないと思っています。それに今回の撮影での反省点をクリアしなければ、この映画に参加させてもらった意味はないと思っているので、もっと繊細に演じることを強化していきたいですし、もっと余裕を持てるようになりたいです。

――今後の目標や憧れの先輩俳優がいれば、具体的に挙げてください。

『幻肢』では監督に引っ張ってもらってばかりだったので、自分一人で戦える力がほしいです。いまはそれがいちばんの目標ですが、最終的な目標としては、いろんな役をこなす役者になりたいです。俳優を目指すきっかけになった藤原竜也さんや、森山未來さん、山田孝之さん。また最近では、役所広司さんや佐藤浩市さん、松方弘樹さんの渋さやカッコ良さに憧れています。そして、長谷川博己さん。舞台出身の方ということもありますし、『地獄でなぜ悪い』での映画狂の役柄にとても惹かれました。「ハムレット」での藤原さんも狂気の演技をされていますし、普段あまり感情を前に出すタイプではない僕としては、どこかで憧れがあるんだと思います。

――2014年11月12日(水)にNHK BSプレミアムで放送されるドラマ「鵜飼いに恋した夏」にも出演されましたが、いかがでしたか?

 大企業の御曹司で、育ちはよくても女ったらしで、恋人がいるのにほかの女性と浮気してしまうチャラ男役だったので、かなり悩みました。しかも、ヒロインで鵜匠役の忽那汐里さんが、事務所の先輩というところもプレッシャーだったのですが、キャストのみなさんとコミュニケーションを取りながら演じることができて、『幻肢』に比べて、少し余裕を持って演じられたと思います。是非、楽しみにしてもらえればと思います。

吉木遼(よしきりょう)
1988年12月3日生まれ。千葉県出身。11年、俳優デビューし、舞台を中心に活動。映像デビュー作となった『恋は考えるな、愛は感じろ』は、ちちぶ映画祭観客賞を受賞するほか、モントリオール国際映画祭に正式招待。『幻肢』が長編映画初出演にして、初主演となる。

『幻肢』
ドライブ中に事故に遭遇した雅人(吉木遼)と遥(谷村美月)。意識は戻ったが、記憶障害と診断された雅人は、遥や事故のことが記憶から抜け落ちていた。その後、彼は自身が研究課題としていた精神科の先進治療、TMS治療を受けることで、奇妙な出来事に遭遇する。
(C)2014映画「幻肢」製作委員会
11月8日(土)から広島サロンシネマ、福山駅前シネマモード、MOVIX周南ほかにて公開
http://genshi-movie.com/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

 

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2014.11.07(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央