ミステリー作家、島田荘司が映画のために書き下ろしたラブ・ミステリー『幻肢』。失った手足の存在を感じる幻肢をテーマに、記憶を失った主人公・雅人を演じるのが吉木遼。長編映画初出演にして、初主演を務めた期待の新星に迫る。

舞台「ハムレット」で俳優を志す

――俳優を目指した、きっかけを教えてください。

 大学2年生のときに、渋谷でエキストラのスカウトをされたのがきっかけです。そのころは俳優への興味はほとんどなくて、まだアルバイト感覚だったのですが、そのときに知り合った人から勧められた、藤原竜也さんが主演で、蜷川幸雄さんが演出された舞台「ハムレット」のDVDを観て、衝撃を受けて……演じることにそこから興味を持ち始めて、この道に進んでみようと思ったんです。

――その後、舞台を中心に活動されていましたが、そのときの心境については?

 役者をやろうと思ったときは、すでに21歳という、この世界では遅いほうだったので、命懸けでやらないといけないと思っていました。それで、蜷川さんのところで演出助手をされていた方が作られた俳優私塾「POLYPHONIC」に入って、そこで一日5時間ぐらい、週4日、無我夢中で演技の勉強をしていました。

――その後、自身の転機となった作品は何ですか?

 初舞台からの2年間ぐらいは、正直かなり苦しかったのですが、演じることの楽しさを初めて知ったのは、野田秀樹さんの「赤鬼」という作品のチャリティ公演です。4人芝居で、一人で何役も演じるという難しいものでしたが、演じ分けるという経験をとても新鮮に感じましたし、この作品で演劇を心から楽しいと思いました。

2014.11.07(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央