手織りのタペストリーが彩る小さな村アライオロス
エヴォラから北に約20キロ、丘の鞍部に広がるアライオロスは、手織りのタペストリーで知られる小さな村だ。熟練工でも1平方メートルを織るのに2週間を要するというタペストリーは、ペルシャからもたらされた手法に、独自の柄を加えて生まれたもの。17世紀に始まった工芸は連綿と受け継がれ、今も狭い通りのあちらこちらに、工房や店が点在している。
タペストリーの美しさもさることながら、この村の一番の魅力は、絵本から飛び出したような日常の光景だ。眩しいほどの白い壁に青い塗りを施した家並みと、その前でのんびりと雑談を楽しむ人々。子どもたちものびのびと育っているのか、外国人旅行者にも臆せず笑顔を向けてくれる。
美しいポウサーダも、この小さな村でひときわ輝きを放つ存在。「ポウサーダ」というのは、古い修道院や城などを改修して建てた宿泊施設のこと。この街には、壁一面をみごとなアズレージョが覆う聖堂を持つポウサーダがある。歴史ある建物を利用していながらも、設備は近代的なので、宿泊はとても快適だ。
ポウサーダでゆっくりと過ごし、小さな街をきままに歩くことが、この街では一番楽しいこと。時の流れがあまりにもゆったりとしていて、時間を急ぐことが無意味だとさえ思ってしまう。
2014.11.04(火)
文・撮影=芹澤和美