学校図書館が「このマンガを置きたい!」

――第5話の子どもたちのその後が気になります! 日本語がわからない子どもへの支援は昨今よく話題にのぼるようになりました。

藤見 社会にコミットしたいと思って描いているので、現実社会に少しでも良い影響があるといいなと思います。

編集 学校図書館から「このマンガを置きたい」という申し出をいただくことがけっこうありまして。この反応はうれしいです。

――なるほど! 本作は子どもにも理解しやすいですよね。キャラクターの表情から、繊細なことがスッと伝わってきますし。

藤見 知人の社会学者でハーフの研究をしている人がいるんですが、当事者やその親御さんから「論文を読ませてほしい」という問い合わせがあるそうなんです。アカデミアじゃない人が論文を読むってけっこうハードルが高いと思うんですが、それだけ情報が求められているんだなと実感します。

本作で描きたい3つのテーマ

――1巻のカバー絵はとてもインパクトが強くて書店でも目立っています。この表情にはどういう思いを込めていますか?

藤見 第1話の扉絵みたいなイメージです。最初は街の中に立っている絵も考えていたのですが、感情が出ている方がいいという話になったんです。デザイナーさんも熱い気持ちで取り組んでくださってうれしかったですね。「やっぱ怒りの顔じゃないですか。笑顔とかじゃないよね、このマンガは」という結論になりました。タイトルロゴが半分になってるのもすごく気に入ってます。

――訴えかける力が強い表紙です。ここまで怒りを前面に出したものは珍しいのではないでしょうか

藤見 そういえば……友達のマンガ家さんが、漫画を描く上でテーマになるキーワードを3つ決めると言ってたんですよ。

――「友情、努力、勝利」みたいな?

藤見 そういうのです。で、私も考えてみて。『半分姉弟』で描きたいのは「ユーモア、怒り、愛」だなと。それは今後も掲げていきたいです。

――カッコいい!

藤見 自分でもカッコいいこと思いついたなって(笑)。

――ネガティブな怒りではなく、勇気や希望がわいてくるようなポジティブな怒りですよね。みんなが幸せである社会に自分も関わるんだという気持ちがわいてくるような。夜に一人で自分と向き合う時間にぴったりの作品だと思います。

藤見 ありがとうございます!

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