路地裏で目を引く個性派スポット。刺しゅう屋×ボタニカルショップ「TENBOU(十坊)」とは?



藤屋本店から本町の裏路地を歩くこと約2分。歴史を感じさせる木造建築と、多肉植物が織りなす外観がレトロモダンなショップが目に留まりました。店名はTENBOU(十坊)。これは何か面白そうと、吉岡さんとともに店内へ。
織物工場跡地を改装したという店内に入ると、柱がなく広々とした和洋折衷の空間が広がります。随所に設置されたラックにはTシャツやスエットが陳列され、そばには種類豊富な物珍しい植物がずらり。さらに、奥では数十台におよぶ刺しゅう機が稼働していました。

見るからにミクスチャーな雰囲気が漂うここ十坊(てんぼう)は、桐生市出身の坂下天(たかし)さんが立ち上げた刺しゅうデザインの工房兼店舗。企業などから依頼された刺しゅう制作を行っているほか、ウェアに刺しゅうを施すカスタムオーダーも受注しています。さらに、店内の植物は販売用で「珍奇植物研究所」という名のもとイベントにも出店しているそう。

吉岡さんは、十坊(てんぼう)のオリジナルブランドとサンプルのウェアが並ぶラックが気になったようで、念入りにチェック。十坊(てんぼう)の看板犬、ハンス君がバックに刺しゅうされたトップスを「これかわいい」と手にとっていました。
桐生の刺しゅうの魅力を発信。若い感性が地域産業の新たな形を作る

繊維産業が盛んで刺しゅう屋も多いという桐生において、個性が際立つ十坊(てんぼう)。坂下さんが、十坊(てんぼう)の運営に込める思いを話してくれました。
「十坊(てんぼう)をオープンしたのは5年ほど前。オーナーの坂下と私、そしてスタッフも全員が桐生出身です。この辺りは昔ながらの刺しゅう屋が多いのですが、うちの店はフランクな雰囲気で、少し異色かもしれません。気軽に刺しゅうを楽しんでもらいたいから、ほかの刺しゅう屋では受けていないような個人からのオーダーも受注しています」
十坊(てんぼう)では刺しゅう制作を1点からオーダー可能で、デザインの持ち込みにも対応している。実際、子どもが描いた絵をもとに刺しゅうを制作してほしいというオーダーを受けたことも。オリジナルデザインの制作依頼となるとハードルが高く感じられる刺しゅうアイテムを、十坊(てんぼう)では手軽に手に入れることができるのです。
●●さんは続けて、「今、桐生の刺しゅう業界と繊維産業は高齢化が進み、職人の数も減ってきています。うちの店は、オーナーも含めてスタッフの平均年齢が若いことが特徴。イベント出店もその例ですが、従来の刺しゅう屋の枠にとらわれず、若い力と今の感性で桐生の刺しゅうの魅力を発信していきたいと思っています」。彼女の言葉を受け、脈々と歴史が息づく町だからこそ、地域産業を礎に新たな可能性が生まれているのだなと感じました。


十坊(てんぼう)
群馬県桐生市本町1-4-13
https://www.tenbou.jp/
――新たな出合いの連続だった桐生での散策レポートは、後篇に続きます。
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吉岡さん着用
シャツ 17,600円 中に着たTシャツ 9,900円 パンツ 27,500円 バッグ 17,600円/以上アークテリクス

2025.09.20(土)
取材・文=宮﨑真里江
写真=釜谷洋史