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これからも通いたい、新しい息吹

 そんな店主 北橋さんは、以前は証券会社でバリバリと働く会社員。その後、アジアやアフリカなどをバックパッカーとして巡り、その間に目覚めた自国の食の素晴らしさに気づき、和食の道へと進み、今に至ります。

 それを支えているのは、同じく証券会社時代を共にした奥様の典子さん。息の合った二人三脚が古い洋館に吹き込んだ新しい息吹は、これから先さらにおいしく、面白い提案をしてくれそうで目が離せません。

 最後に――。余談になりますが、初めてここを訪れたとき、今は亡き義叔父が執筆した鎌倉の洋館について書いた書籍がカフェにさりげなく置かれていたのは、個人的にかなり嬉しい出来事でした。

 また、改装にあたり、以前こちらにお住まいだった方の表札を今も大事にとってあるそうで、こちらに立ち寄ってくださることがあったらお渡ししたいと話されていたことは、古いものを愛で、新しいものと併せて次の時代へと繋いでいく北橋さんの心意気にふれた出来事でした。

 こういう想いが、きっと料理をおいしくし、空間をやさしくするんだろうなぁ。この秋はそんな店主が生み出す空間とともに、日本酒(1合950円~。種類も豊富)とおつまみからはじめ、お蕎麦をゆっくり堪能したいと思っています。

鎌倉 北橋

所在地 神奈川県鎌倉市長谷1-11-32
電話番号 0467-84-9662
営業時間 11:00~20:30
※カフェは10:00~18:00、土・日・祝は9:00~
定休日 火曜
https://kamakura-kitahashi.com/

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)がある。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

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Column

赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み

鎌倉で暮らしながら、料理編集者として飛び回る毎日を送る、赤澤かおりさん。どんなに忙しくても赤澤さんが元気いっぱいなのは、地元・鎌倉でお酒を飲む時間。このシリーズでは女性のひとり旅も多い鎌倉で、「ひとり飲み」に優しいお店をご紹介します!

2024.11.15(金)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美