この記事の連載
赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み #01
赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み #02
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赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み #20
赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み #21

鎌倉で旦那さんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。
忙しい毎日のなかで、ほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、もしくはおうちで目一杯働いて、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に訊いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。
ふっと時間が空いたとき、ひとりでふらりと出かけた鎌倉で、女性ひとりでお酒を楽しむなら? 今回は鎌倉で食べる、ひとりに優しいイタリアンをご紹介します。3回目はひとりでも緊張しないカウンターリストランテ。
トークが楽しくてひとりコースでも寂しくない!
ひとりで飲みに行く場所には自分なりの小さな決め手があります。賑やかな雰囲気の中でその空気を味わいながら誰と話すでもなく気ままに飲めるところか、お店の方が楽しい人でいろいろな話をしてくれるところ、というのが私の決め手。いずれにしろ、静かに飲むという感じではなく、いつでも賑々しくいたいということなのかもしれません。ひとりで飲みに行くのに……ですが。

今回訪れたのは、オープンから今年で丸18年の、鎌倉の小町通りを鶴岡八幡宮手前まで行ったところにあるリストランテ「La Luce(ラ・ルーチェ)」。以前は小町通り沿いに入り口がありましたが、今は脇道を少し入ったところに変わり、10年が経ちます。小町通りを正面にしていたほうがお客さんが入りやすくていいのでは? と思うでしょう? でも、そこをあえて横に。わざわざ探して来る人のみが味わえるところなのです。
オーナーシェフの小川真さんはイタリアのウンブリア州で3年の修業を重ねた後、帰国してお店をオープン。どうして3年だったのかというと、結婚してから奥様に背中を押され、修業に出たものの、寂しくなって帰って来ることにしたんだそうです。なんともラブリーな話。それにしても、結婚早々にご主人の夢を叶えるために単身イタリアへ行くことを良しとする奥様が素敵すぎると思ったお話を伺い、小川さんへの料理の愛が深い理由が見えた気がしました。

ところでこちらはカウンターのみ8席のリストランテ。リストランテにしたのは、ウンブリアで修業していたお店がリストランテだったことが大きく影響しており、かつ「こう見えて“かわいい”料理が好きなんですよ」と、小川シェフ。
ウンブリアといえば、サルシッチャや豆料理、トリュフなどが有名。小川シェフ曰く、ウンブリアは日本でいうところの長野県のような土地で、気候や食材にも恵まれ、緑豊かなところだったそうで、今もその腕に、舌にしかと残り、刻まれたウンブリアの記憶とともに料理を生み出し続けているのだそう。
料理はコースのみで、微かな季節の変化に合わせて2週間ごとにメニューの内容が変わります。だから私は、移り変わっていく季節と料理を味わうように、お酒もゆっくりしたペースでペアリングしてもらうようにしています。

でも、まずはサッポロの白穂乃香から。これだけは毎回、絶対と決めていること。このビールは、那須工場だけで造られている、関東と愛知県限定のクリーミーな泡が優しい口当たりの生の白ビール。とにかくこれが飲みたいがためにここを予約しようと思ってしまうほど、なめらかで軽やかな感じがいいビールなのです。しかも飲めるところが限られているというのも特別感があっていい!

ビールをプハッと満喫したら、あとはシェフにお任せ。カウンター越しに仕上げをするシェフの手元や、カウンターに置かれたシェフの顔入りのカレンダー(笑)をゆったりと眺めながら、料理とお酒に舌鼓。その間も、シェフが料理の説明とともに投げてくるダジャレを打ち返したり、時折スルーしたりしながら楽しくコースが進んでいきます。
2025.04.13(日)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美