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ふと気づけば蟹に夢中の無言タイムに突入

 刺身は、氷水にくぐらせ“花咲き”に。ほどよい弾力、ねっとり感がたまりません。地元で人気の香箱蟹(メスのずわい蟹)は、オスに比べて身質が繊細で旨味が強く、プチプチの外子(卵)と、濃厚な内子(未成熟の卵)、蟹みそも絶品。上品な脂がのった寒鰤の刺身も鮮度抜群です。

 続いて、香ばしく甘みが際立つ焼き蟹と、蟹みその凝縮した旨みにお酒が進む甲羅焼き、カダイフを巻いた錦糸揚げ、蟹と野菜のおひたし、前述の蒸し蟹(しめ縄蒸し)へ。蟹に夢中の無言タイムを経て、さらに蟹すき、蟹の旨みたっぷりの出汁で作る雑炊を平らげる頃には、日頃のストレスもどこへやら。これはもはや、食べるリトリートと言えましょう。

 蟹料理を彩るのは、九谷焼や山中塗の器。「白銀屋」から受け継いだものや、地元作家に依頼したオリジナルも多いとか。「器は料理の着物」と唱えた美食家、北大路魯山人の流儀にならい、料理と器の取り合わせにこだわっています。

 「界 加賀」の蟹会席は、2024年2月29日(木)まで(年末年始の除外日あり)。「活蟹づくしのタグ付き蟹会席」60,600円~(2名1室利用時1名あたりの宿泊料金。税・サ込、夕朝食付き)。冬の北陸ならではの美味を存分に堪能できる会席コース。年に1度の贅沢にふさわしい一夜になること間違いなしです。

2023.12.29(金)
文=伊藤由起
撮影=志水 隆