この記事の連載
- 「界 加賀」【前篇】
- 「界 加賀」【後篇】
1624年(徳川三代・家光公の時代)の創業以来、多くの要人・文化人が逗留した老舗「白銀屋」の歴史を受け継ぐ「界 加賀」。加賀伝統の味、建築、芸能、工芸をモダンな感性でアップデートしたおもてなしが評判の温泉旅館です。前篇では、この時期ならではのずわい蟹を食べ尽くす至福の夕食と、自慢の温泉を中心にご案内します。
活蟹づくしの蟹会席で北陸の旬を極める
冬に北陸を旅するならぜひ味わいたいのが、ずわい蟹。「界 加賀」では、いくつかの会席コースで味わうことができますが、蟹好きなら「活蟹づくしのタグ付き蟹会席」が断然! おすすめです。
ひとりにつき約1.5杯提供される蟹は、すべて活蟹を使用。目玉となる「活蟹のしめ縄蒸し」は、高品質を証明するタグ付き蟹です。例えば、写真の青いタグ付きの蟹は、輪島、橋立など県内の漁港に揚がった9センチ以上あるオスのズワイガニ「加能ガニ」。カニ漁の船主が品質に自信を持てるものにだけ漁港の名称を刻印した青タグを付け、市場へ出しています。
「活蟹のしめ縄蒸し」は、「界 加賀」でしか食べられない逸品。蟹料理の古い文献にある、囲炉裏の灰の余熱で魚介類を蒸す調理法にヒントを得たもので、活蟹を塩水に浸した縄で結わえて蒸すことで蟹にやわらかく熱が入り、ふっくらジューシーに蒸し上がるのです。縄から滲みたほのかな塩味が蟹の甘みをぐっと際立て、まさに絶品!
2023.12.29(金)
文=伊藤由起
撮影=志水 隆