奥日光の美味や温泉を満喫した宿泊翌日。ゆっくりと朝食を楽しんだ後は、「界 日光」ならではのアクティビティをぜひ。社寺を中心に発展した文化やそれを伝承する人々の営みに触れる体験が、旅をより豊かなものにしてくれます。
湯波をはじめヘルシーな地のもので朝ごはん
温泉旅館の楽しみのひとつが、和の朝食。つやつやに炊き上げられたご飯のおともに、健康的な和食の頭文字を合わせた合言葉「まごわやさしい(豆、ごま、わかめ=海藻、野菜、魚、しいたけ=きのこ)」に沿ったおかずが並びます。
汁ものの代わりに登場するのは「鱒と湯波のべっこう鍋」。煮えばなの出汁をいただくと、そのやさしい旨みが五臓六腑に染み渡ります。とろりとした身厚の日光湯波、やわらかな鱒のつみれもいい塩梅。体を温め、目覚めさせる朝食にうれしい一品です。
「宝の小槌」の彩色体験を通じて日光の寺社の奥深さを知る
宿泊翌日、ぜひ参加したいアクティビティが「社寺の修復に携わる伝統工芸士と日光彩色体験」(10:00~12:00、1人5,000円~、4日前までに要予約)。日光東照宮などの歴史的建造物を修復している伝統工芸士の方に、岩絵の具を使った絵付けを教わります。
なかでもユニークなのが、家庭内の災を払う縁起物「宝の小槌」に色付けや名入れを行う「宝槌祈願コース」(12,800円)。彩色した小槌を中禅寺立木観音へ持参すると、特別祈祷を受けることができるというオプション付きです。
迎えてくれたのは、栃木県指定伝統工芸士の伊原実穂さん。伝統工芸を家業とする家に生まれ育ち、10代から修業をスタート。現在までに、日光東照宮をはじめ数多くの文化財修復に携わっています。
社寺の修復に使うのと同じ岩絵具や、にかわ、本物の金箔を使い、宝の小槌に色をのせる作業は、どこか写経にも通じる心地よい緊張感。平面に描くのとは勝手が違う難しさがありますが、伊原さんのやさしいフォローもあり、気づけば無言で集中。この体験のあとは、日光の社寺を見る目がきっと変わるはず。
ちなみに「日光東照宮・彩色見学コース」(18,200円)では、伊原さんの作品が飾られた客室に宿泊。アクティビティ当日は、長方形の木片に色付けを行い、その後、日光東照宮で伊原さんと一緒に非公開の「彩色見取り図」を見学することができます。
2023.06.03(土)
文=伊藤由起
撮影=鈴木七絵