
京都嵐山の名所・渡月橋から大堰川(おおいがわ)をさかのぼること約15分。平安貴族がこよなく愛した別荘地に「星のや京都」はあります。後篇では、客室でゆっくりといただく“朝鍋”をメインとした朝食や、秘められた扉の向こうにある香道の世界、京文化に触れるアクティビティをご紹介します。

“奥の庭”で行う「水辺の深呼吸」が導く爽快な1日

「星のや」には、その土地の自然環境や歴史、文化を生かしたさまざまなアクティビティがあります。ここ「星のや京都」では、嵐山の豊かな自然と平安の昔から受け継がれた文化を融合させたアクティビティをぜひ。
“奥の庭”で行われる「水辺の深呼吸」は、呼吸法を意識したストレッチ体操(毎朝8時30分~9時。夏季は7時45分~8時15分。要予約)。朝の凛とした空気のなか、思い切り手足を伸ばして血流を促し、深く呼吸をすることで自律神経を整え、活力ある一日へと導きます。

「奥の庭」は、いぶし瓦と白砂を砂紋に見立てた、現代の枯山水ともいうべき斬新なデザインが特徴。ただ眺めるだけでなく、ゲストが集い歩くことで、人も風景の一部となるように作られています。庭の中には上面が平らに磨かれた石がいくつか据えられ、水面のように周囲の景色を映し出す仕掛け。対岸の小倉山を借景に、樹齢400年の大紅葉や、苔、植栽が織りなす景色は、一期一会の美しさです。
時間に余裕があれば、大堰川沿いの遊歩道を散歩するのもおすすめ。大堰川のせせらぎと鳥たちの鳴き声をBGMに、人も船も通らない朝の嵐山をひとり占めできます。

嵐峡の景色とともに客室で味わう野菜たっぷりの「朝鍋朝食」

朝食は各客室で心置きなく。おすすめは胃にも身体にもやさしい「朝鍋」をメインとする和朝食です(1人4,598円)。出汁を張った銅鍋が温まってくると、鰹と昆布のいい香りが漂い始めます。
具材は、京都近郊の契約農家から届く季節の野菜に、きのこ、お揚げさん、生麩、餅など。アツアツをよそい、まずは出汁からいただくと、上品な旨みが五臓六腑に染みわたり、朝から贅沢な気持ちになります。
焼鮭や、朝一番に作る豆腐(豆乳は「京・美山ゆば ゆう豆」から)、ほかほかの白飯といった王道の献立が、すこぶる美味しいのもさすがのひと言。ご飯は多めに持ってきてくれるので、最後に鍋で雑炊を作り、原了郭の黒七味をパラッと振って極上の〆に。朝からお腹いっぱいになろうとも、すぐにゴロンと寝転べるのが、日本旅館の素敵なところです。

2023.04.15(土)
文=伊藤由起
撮影=橋本篤