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銀行、洋菓子店を経て、生まれ変わったギャラリーカフェ

 JR中央本線「富士見」駅の周辺には、カフェや屋台が多く並びます。古きものに新しきものが入り交じり、どこか懐かしくも新鮮な空気に包まれるこの通りの一角に、一際レトロな雰囲気を醸し出しているのが「onri(オンリ)」です。

 おむすび・工藝・珈琲・焼菓子の文字が羅列したガラスの扉を開けると、そこには木張りの壁に囲まれた温かい空間が広がります。艶を纏ったヴィンテージ家具も並び、気分は一昔前にタイムスリップしたかのよう。

 onriオーナーの佐渡勝行さんは、草木染めのアーティスト。2009年に独立し、初めは南佐久郡南相木村で活動していたそうです。その後、10年ほど前に富士見町に活動拠点を移した際、時を同じく移住してきた数人と共同で借りたのがこの建物との出合いです。築80数年の建物を少しずつリノベーションしながらそれぞれの活動場所として、ときにギャラリーとして利用。最後は佐渡さんが一人で借りる運びとなり、現在はここで自身の制作活動をしながら、カフェとギャラリーを営んでいます。

 もとは洋菓子店、さらに遡ると銀行だったというこの建物。2階まで吹き抜けた天高の造りやフロアタイルのデザインは、西洋のエッセンスを取り入れた大正モダンな雰囲気があり、どこを切り取っても絵になります。

2023.12.27(水)
文=平野美紀子
撮影=深野未季
スタイリスト=永田哲也