乳首ドリルのない吉本新喜劇
ギバちゃんの良さに再度気づかせてくれた『ブギウギ』に話を戻そう。なんと喜劇のセオリーにバシーッとハマった、隙のない構成だろうか。知人が「乳首ドリルが出てこない吉本新喜劇」と褒めていたが(絶賛である)、泣けて笑ってしみじみする感じ、なるほどと思う。
明るいお節介な人気者の主人公(スズ子)を中心に、だらしないけど情の厚いオトン(梅吉)。肝っ玉オカン(ツヤ)。のんびり系だが、時々核心をつく発言をする弟(六郎)。色気と落ち着きのある親友(タイ子)。優秀、泣き虫、モテモテ、と個性豊かな友人三人(秋山、和希、リリー)。バラエティに富んだご近所の仲間たち。浮かれた師匠(羽鳥)、気取った思わせぶり男(松永)、怖い顔で正論を言うライバル(茨田りつ子)。ああ、パーフェクト。
常連客と冗談を言いへにゃへにゃ笑う梅吉を見て、ツヤとスズ子がこんな会話をするシーンがある。
ツヤ「見てみいな、お父ちゃん」
スズ子「アホやなあ」
ツヤ「せやけど、なーんや、幸せな気になってくるやろ。みんなが笑ろてんの見たり、自分が大笑いしたりすると、なんや、幸福な気になんねんな」
笑顔ってやっぱり最強だ。柳葉敏郎が見せる、カッコいいとか悪いとかとは全然違うゾーンにある、クッシャクシャ・スマイルは、「笑う門には福来る」が疑う余地のないセオリーなのだと示してくれる。そして、これからの展開では、そんな彼から、とてつもない悲しみが見えてくるのだろう。
「アホやなあ」と笑い合える、小さな幸せが続く毎日というのは、すごいことなのだ。
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
作:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
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Column
田中稲の勝手に再ブーム
80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。
2023.11.20(月)
文=田中 稲