J-POP史上最強のイントロ『Get Wild』
『Get Wild』といえば、やはりなんといっても「テンテンテン(シャーン)、テ・テンテンテテン……」のイントロである。神。控えめに言って神! アニメ「シティーハンター」エンディングテーマとして初めて聴いたときの感動は忘れられない。あの天使が梯子を降りてくるような音色からの、デケスケデデデンシャッシャッシャーッというエキサイティングなサウンドに入るメリハリ! あのイントロがJPOPの扉を開いたといって過言ではない!
そこから野性的だが品のある宇都宮隆の歌に入り、ペイーン、ドリーム、ターッフ、ラーックと弾むイングリッシュを投げかけてくる。その間ずっとサウンドの底で響き渡るドドスコドンドンというベースが心地よし。スーツの似合うカッコいい3人なのに、なぜかあやしい観光客に見えてしまっているMVもいい!
歌詞も力強さとやさしさが同居する。人とは傷つけあうもの。しかし痛み(pain)があるからこそ分かり合える。守れるものを見つけ、信じられる――。このpainの法則は、渡辺美里の「My Revolution」(1986年/作詞:川村真澄)によって提示され、ゲワイ(作詞:小室みつ子)によって完成したと私は思っている。強くなるための苦痛、これぞ「pain」!
そして彼らは30周年、4枚組CD『Get Wild Song Mafia』にて「4時間20分、36曲全部ゲワイ」という無茶をしている。私も手に入れたが、恐ろしいほどクセが強い。
前奏でピコピコスコピコと、小室哲哉によるシンセサイザーが延々と続くゲワイ、「ゲゲゲゲゲゲ!」とゲを地鳴りのように連発するゲワイ。さすが天才、チャレンジのスケールが違う!
4枚目は錚々たるメンバーによるカバーが収録されている。カバーするアーティストには、うららかな陽だまりのような声を持つクレモンティーヌも! 私は「ゲッワイルエンターッフ!」「チャンスエンラーック!」と語尾の圧がやたらと強いDave Rodgersバージョン、色気のある高音が素晴らしいglobeバージョンがお気に入りだ。
封入されている冊子のインタビューにも書かれているが、「Get Wild」はTM NETWORKにとって、デビュー曲でもない、最多売り上げでもない(1位は「LoveTrain」)。それでも、ここまでの熱い企画アルバムが求められる、この特殊な愛され方こそ伝説。
きっとこれから毎年4月8日には、日本中、いや、世界中であらゆるバージョンがガンガン流れるかと思うと、早くもワクワクする!
2023.04.21(金)
文=田中 稲