変わらない宇都宮隆のタイムマシンの名操縦士感

 しかしなぜ彼らの音楽は、ピコピコツクタカと忙しく疾走感が半端ないにもかかわらず、こんなに心が落ち着くのだろうか。それはきっと、宇都宮隆の歌い方が、常にフラットだからではないかと思うのだ。

 アレンジはライブごとに恐ろしく変わったとて、彼の歌声は変わらない。1987年のあの感動そのまま体感できる歌声! 公式YouTubeで公開されている2021年の配信ライブの『GetWild』も、あまりの変わらなさに聴いてビックリしてしまった。スゴ腕のタイムマシンの操縦士の如し! 安定感がすばらしい。

 そしてなによりホッとするのは、三人の穏やかな幼馴染み感である。三人組の仲良しといえば、自動的にTHE ALFEEが思い浮かぶが、TM NETWORKのバランスも負けず劣らずである。誰か一人がトラブったとき、離れるのではなく集まれるというのはすごいことだ。

 そして、仲の良いバンドには必ずバランサーがいる。THE ALFEEに坂崎幸之助がいるように、TMにおいてのギターの木根尚登の大地のような包容力よ! 私は、佐々木ゆう子の『PURE SNOW』と、渡辺美里の『さくらの花の咲くころに』の作曲が彼だと知り、評価が爆上がりした。季節の粒子が見えるようなメロディを作る人だ。

 三人の個性が作る金色のトライアングルをのぞき込むたび、違う景色が見える。宇宙も見えるし、小さい頃仲間とノリで作った不格好な秘密基地も見える。そして、気づかぬうちに忘れてしまっていた希望やパワーを思い出す。

 彼ら3人の悟り感と好奇心のミックスの配分はあまりにも奇跡的。実は何度も過去と未来を行き来して、人生10度目くらいの40周年かもしれないTM NETWORK。私もその輝くサウンドシップに乗り込もう。

 いざ、生まれ変わるユニバース!!

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田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2023.04.21(金)
文=田中 稲