借金返済をスタイリッシュに伝えることに成功!?

 困った。ここ数日「貸した金返せよ」というフレーズが頭から離れない。いや、私が誰かに金を貸しているわけではない。11月25日から毎週、3作連続で劇場公開される令和版「ナニワ金融道」の予告編を見たからである。ガシガシに金貸しシーンと絡みつく主題歌が、ウルフルズの「借金大王V」なのだ!!

 1996年、中居正広さん主演の「ナニワ金融道」で「借金大王」を初めて聴いたとき、私はてっきりドラマのための書き下ろしだと思っていた。そうではなく、4thシングルとしてドラマの2年も前に発売されていたと知ったときのビックリたるや。しかもその一つ前のシングルは「世の中ワンダフル」。ワンダフルの次が借金。なんとも人生哲学を感じるではないか。恐るべし、ウルフルズ!

 「借金大王V」は「借金大王」のセルフカバー。時を超え再び雄叫ぶ「貸した金返せよ」は、何百倍もの利息(魅力)をつけて炸裂することだろう!

 ちなみに、「アレッ、竹内力のやつは何だっけ?」と思った方、あれは「難波金融伝・ミナミの帝王」である。混同するのもわかる。タイトルが果てしなく似ている!

 しかしつくづく思う。借金をよくこんなカッコいい歌にできたな、と――。日本語をあまり知らない外国の方が「えんがちょ」を「enjoy」、「貸した金返せよ」を「Can't Stop Falling' in Love」と聴き間違え、ハッピーなラブソングと思いこんだとて無理もない。それほどイカシたメロディーだ。

 しかも、借りる側の目線ならまだわかる。

「はした金も返せずに あいつの妹に手を出して 嗚呼俺はダメなヤツ」

 的なクズ男ソングは昭和歌謡あるあるだ。しかし貸した側、迷惑をかけられた側がそれに見合った金銭を求める歌というのはなかなかない。いやもうナイス・アプローチ!

2022.12.03(土)
文=田中 稲