大ヒットアルバム「バンザイ」の切ない思い出
さて、そんなウルフルズは今年デビュー30周年だ。私が彼らを知ったのはデビューから3年後、「ガッツだぜ‼」でブレイクした時期。ウルフルズの名を世に知らしめた3rdアルバム「バンザイ」には思い出がある。語りたい。ちょっと長いセンチメンタルメモリーとなるが、お聞きいただければ幸いです……。
私が20半ばの頃、友人カップルの車で家まで送ってもらうことになった。車の発車とともに、彼女がカーステレオのスイッチを入れ、流れてきたのがアルバム「バンザイ」だ。「ガッツだぜ‼」いいよね。「バンザイ~好きでよかった~」好き好き。そんな風に普通に楽しく聴いていたのだが、5曲目「SUN SUN SUN’95」がかかったとき、様子が変わった。サビで突然、助手席の彼女と運転席の彼が声を合わせ、二人の世界トーン(甘く幼い感じの声)で
「さんさんさん、おーてんとさまさま さんさんさん♪」
と歌い出したのである! そしてなにやら片手を振る振り付けまでし始めた。きっと二人のお気に入りの曲で、ドライブデートでは毎回共に歌っているのだろう。
なんて素敵。素敵だが二人とも、後部座席にいる私の存在を忘れていませんかーッ! 私も一緒にハミングでもしてみようか。いや多分邪魔きっと邪魔! 私のオロオロなど気付く様子もなく、二人は「さんさんさん♪」と歌い続けていた。
すっかりラブラブオーラにあてられた私は、車から降りた後、立ちくらみを覚えながら心で叫んだ。羨ましヒーッ!!
そしてその後、少しでも幸せのオコボレがもらえるのではないかと、アルバム「バンザイ」を購入してしまったのだった。くっ。
「SUN SUN SUN’95」は、改めて聴いて、とてもいい歌だと思った。しかし私は次の「てんてこまいmy mind」にいたく共感した。私の人生、本当に火の車。てんてこまいだわ!
いろいろと思い出してしまった。すいません、涙拭く水色のハンカチ下さい……。
2022.12.03(土)
文=田中 稲