これは年末までの毎週木曜日、大変なことになったぞオイオイ……。10月6日から始まったドラマ「silent」。ただでさえ更年期&運動不足で乱れ打つこの心臓が持つのだろうか。身の危険を感じるほど切ないドラマである。


 主人公の川口春奈さんと目黒蓮さんの泣き顔、夏帆さんのひたむきでどこか不安げな表情、私の中で「こんな息子がいればどんなに自慢だろう」俳優ナンバー1である鈴鹿央士さんの、「ドラゴン桜」「六本木クラス」に続く報われなさ! キャスト陣が束になってセンチメンタルという矢をガスガス放ってくる。トドメに物語のカギとなる音楽がスピッツ!! ゴフッ……。

 初回を見て以来、ずっと頭から「魔法のコトバ」と「楓」が離れず、気づけば「魔法のコートバー、ふふふふふふーふふーん」「さよーなーらー……」と鼻歌交じりに歌っている。そこから芋ヅル式に、「空も~飛べるはず~」(「空も飛べるはず」)「離さな~い」(「スカーレット」)など、スピッツ曲のサビが次から次へと浮かんでくる!

鼻歌で出てくるナンバー1アーティスト

 恐ろしい。また脳内ジャックされているぞ、スピッツに! そう、「また」なのである。こんなことは一度や二度ではない。彼らの歌は、鼻歌として出る確率が異常に高いのだ。「魔法のコトバ」は久々だが、「ロビンソン」「優しいあの子」は普段からそりゃもうよくポロリと出る。とある秘密組織が世界征服の一環として彼らの曲を利用し「全人類の鼻歌を乗っ取る計画」を企てていた、としても全く驚かない。むしろ「スピッツの曲なら可能」と深く頷くだろう。

 書きながら思い出したが、私もこの「スピッツ鼻歌問題」を別記事で2度も取り上げていた。我ながら、むちゃくちゃ心を乗っ取られているではないか!

 同じ曲が頭の中で延々繰り返される現象を、「イヤーワーム(耳に棲みつく細長い虫)」というらしい。彼らの音楽は「延々」とはまたちょっと違うけれど、脳の端っこに棲みつく小さな夢の虫のようだ。くっ、また鼻がモゾモゾしてきたぞ。ルールールールー……(「優しいあの子」)。

2022.10.27(木)
文=田中 稲