「愛は勝つ」はイントロで心の扉が開かれる!

 さて、突然ですが誌面イントロドン!

 次の3つは大ヒットしたJ-POPのイントロです。それぞれタイトルをお答えください。

1.タン! タラタン・タン・ターン・ターン!(1990年リリース)
2.スケテッ! パーラーラーラー…(1991年リリース)
3.タンタンタン・タ・タンタン・タ・ターン…(1987年リリース)

 答えは

 1.「愛は勝つ」2.「ラブ・ストーリーは突然に」3.「Get Wild」でした。

 わかるかいな! 申し訳ありません……。

 これは、私が選ぶ「きっと大勢の人がイントロの時点でこりゃメガヒットになるとピンと来たであろうJ-POPベスト3」である。しかもこの3曲、イントロだけではなく頭からサビ、終わり、曲、歌詞、アレンジまで完璧である。奇跡!

 特に「愛は勝つ」は一つの発明だと思っている。古くから歌謡曲の代表的なテーマだった「愛」。それはいつの世も尊いけれど不確かなもの。昭和の歌のタイトルを見ても「愛は不死鳥」「愛はかげろう」「愛は風まかせ」……などなどファンタジーかつ儚い扱いである。そこに、バブルが弾けた1990年、新時代とともに突然ドカンと「愛は勝つ」と来たもんだから私は本当に驚いた。

 「愛」に「勝つ」をくっつけるのは、清水の舞台から飛び降り、バウンドしてもう一度舞台に戻るくらいのテクニックと勇気が必要だと思う。ヘタをすれば超薄っぺらくなり、「愛は勝ち負けじゃない」とコテンパンに言われかねない!

 しかし「愛は勝つ」はそれをさせない。ピアノのイントロ「タン! タラタン・タン・ターン・ターン!」が、「難しい理屈抜きで!」と心の扉をガッと開いてくるからだ。そこに間髪を容れずKANの力強い歌声が「心配ないからね」と入ってくる。じゃあもう聴いているこちらも「お言葉に甘えて素直にいきますか」とオープンハートせざるを得ない。

 この歌は「無形の感情シンプル化装置」というKANの発明。愛なんてケッ、人なんてペッ、とヒネてウダウダしているとき、この曲を聴くと「ああ、なんだかんだ私は愛は『ある』じゃなくて『勝つ』と誰かに言い切ってほしかったのかも」と妙に素直になるのである。

2022.06.17(金)
文=田中 稲