サブスクの罪悪感を吹き飛ばす「クライズラー&カンパニー」

 定額制コンテンツ「サブスクリプション」。音楽もApple Music、Spotifyなど様々な配信サービスがあり、多くの人が活用していることだろう。

 ところが私はこんな仕事をしていながら、登録するのはけっこう遅かった。定期制の課金システムに抵抗があるのに加え、1000円前後で世界中の音楽何万曲が聴き放題というシステムがどうにも信じられなかったのだ。

 なにせアルバム1枚聴くのに3500円払っていた昭和のレコード・CD世代である。

「なんだか申し訳ない」

 と妙な罪悪感であり素通りし続けたが、「お試し無料期間3か月」の誘惑にまんまと乗っかってしまった。その後も結局活用し続けている。

 一番ハマったのは「若かりし頃お世話になったが、解散や引退してしまったアーティスト」を検索すること。運がよければ、当時聴けなかったアルバムまで片っ端から聴きまくれることに感動した。うーん、これはエモい!

 その中で、いつ聴いてもモチベーションを一気に上げてくるのが、「クライズラー&カンパニー」である。

 「クライズラー&カンパニー」とは1990年代活動していた伝説のバンドである。

 世界的ヴァイオリニスト・葉加瀬太郎さんが東京藝大在学中、キーボードの斉藤恒芳さん、ベースの竹下欣伸さんと結成。クラシックの名曲を、ロックやポップス調など縦横無尽にアレンジをしていたのである。

 バレエで有名な「白鳥の湖」は、優雅さの中に野心が見えるアレンジ。聴きながら鳥肌が立つほどの麗しい音色!

 「交響曲第5BURN(炎のベートーベン)」は、ディープ・パープル「burn」とベートーベン「交響曲第5番運命」を絡ませるという神技! 激情が倍になって襲ってくるので、寝る前には聴かないほうがいい。タイトルにある「第5BURN」というダジャレまでロックに思えてくる驚異のサウンド!

 私の揺るぎない推し曲は「モルダウ」と「威風堂々~カプリス No.24」! 嫌なことなど耳からトコロテン方式で押し出してくれる格調高さ。これを聴いたあと原曲も聴きたくなり無限ループに陥るので注意だ。

 もうやめられない止まらない。溢れるような音の多様性が楽しめるのである!

 なに? 今からサブスクで聴いてくる? 了解、ではこちらでちょっと待ってます。

 聴き終わったら全てを忘れワインを飲みたくなると思うが、お願い、もう一度このページに戻ってきてください!

2021.12.15(水)
文=田中 稲