人気少女マンガ「君に届け」にも登場する、全肯定の励ましソング

 このように、時にはカップルのラブラブテンションを果てしなく上げ、また時には私のような空回り族の共感を果てしなく誘う。そんなどこまでもユーモラスでA・A・P(アホアホパワー)炸裂のウルフルズだが、ただのアホではない。オモロイことを言いつつ、ふんわり心を支えてくれる。「ええねん」「笑えれば」「まかせなさい」「バカサバイバー」など、ソウルフルなメロディーに乗る全肯定のワードは、ハートの処方箋として非常に有効だ。

 私が大好きな「君に届け」という少女マンガの23巻で「自分が嫌い」と悩む矢野あやねに、友人の吉田千鶴が、ウルフルズのCDを渡すシーンがある。

 わかるよちづちゃん! そうなのだよなあ。自分を好きになれないのはとってもつらい。そんなときにウルフルズはやさしい。私も自己肯定感ドン底の日々、何度も助けられた。このままじゃダメだ。なにかしなくちゃ、頑張らなくちゃ、友人に追いつかないと、個性を出さないと! 焦りとコンプレックスで肩パンパン。それをフッと軽くしてくれた曲が「ええねん」であった。

 また聴きたくなってYouTubeのウルフルズチャンネルを見ると、「ええねん」は1156万回を突破していた。一瞬ビックリしたが、いやいやある意味当然。

 さあ、私もいざ(再生ボタンを押す)。ひあぁぁ(脱力して机に突っ伏す)。私が今まさに欲しい言葉とやさしいソウルがここに……!

 失敗しても、涙ポロリこぼれても、ツーベコーベーいう前に、彼らはこう叫んでくれる。

 何もなくてもええねん。君に会えてよかった! イエーイ‼

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●田中稲note https://note.com/ine_tanaka/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2022.12.03(土)
文=田中 稲