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富山県では最古の生地鼻灯台の中を見学

 この日も第九管区海上保安本部の方々のご協力により、生地鼻灯台に登ることができた。塔頂部まで30.4メートルの高さがあり、内部に螺旋階段が設置してある。

 これを登るのは大変だったが、テラスからは富山湾を一望することができた。西には能登半島が横たわり、東には立山連峰の尾根がつづいている。

 灯器に使われている四等フレネルレンズは県下最大級であり、日本で最初に築かれた洋式灯台と同じ型式である。それはこの灯台が、富山湾に出入りする船の重要な目印になることをかんがみてのことだ。

 富山湾の魚はおいしい。ぶりや白えび、ホタルイカなどはよく知られているが、その他にも豊かな水産資源に恵まれている。それは周囲の山々から滝のような勢いで流れ来る川と湾の深さ、日本海から流れ込む海流などによってもたらされたものだ。

 テラスに立ってあたりをながめていると、それらの豊かな自然がこれからも守られるようにと祈らずにはいられなかった。

 帰りに富山県北方領土史料室に立ち寄った。国後、択捉、歯舞、色丹の四島の史料の保存や継承を目的として設置されたもので、戦前の住民台帳や地図、写真などが展示してあった。

「明治の終わりごろになると、新しい漁場を求めて、北海道の根室や羅臼などへ富山県から大勢が出稼ぎに行き、歯舞群島や色丹島にも渡りました。自然・生活環境が厳しい中、コンブの漁場を開拓し、良質なコンブを採ることで、多くの人が豊かな生活を手に入れました」

 史料室のパンフレットにはそう記されている。

生地鼻灯台

所在地 富山県黒部市生地吉田9602
アクセス 北陸自動車道黒部ICから約10分。JR生地駅から徒歩約30分。
灯台の高さ 30.4m
灯りの高さ※ 32.78m
初点灯 昭和26年
https://tatekuro.jp/enjoy/pointDetail.php?id=200
※灯りの高さとは、平均海面から灯りまでの高さ。

海と灯台プロジェクト

「灯台」を中心に地域の海と記憶を掘り起こし、地域と地域、日本と世界をつなぎ、これまでにはない異分野・異業種との連携も含めて、新しい海洋体験を創造していく事業で、「日本財団 海と日本プロジェクト」の一環として実施しています。
https://toudai.uminohi.jp/

「海と灯台サミット2022」に登壇!

次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人をつなぐ「日本財団 海と日本プロジェクト」の一環として、開催された「海と灯台サミット2022」。安部龍太郎さんは、灯台をよく知ることで、その土地の歴史や地理・航海条件がよりクリアに見えてくると解説しました。

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次の話を読む敦賀半島の先端で日本海を照らす 福井県敦賀市のシンボル・立石岬灯台

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