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海と灯台プロジェクト #1
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海と灯台プロジェクト #23
海と灯台プロジェクト #24

現在、日本に約3,300基ある灯台。船の安全を守るための航路標識としての役割を果たすのみならず、明治以降の日本の近代化を見守り続けてきた象徴的な存在でもありました。
建築技術、歴史、そして人との関わりはまさに文化遺産と言えるもの。灯台が今なお美しく残る場所には、その土地ならではの歴史と文化が息づいています。
そんな知的発見に満ちた灯台を巡る旅、今回は2003年に『星々の舟』で第129回直木三十五賞を受賞した村山由佳さんが千葉県の太東埼灯台を訪れました。
》安倍龍太郎さんの“灯台巡り”の旅、全6回の第1回を読む
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九十九里浜の、最南端に位置する太東埼灯台

秋空はいよいよ蒼く晴れわたっていた。
勝浦灯台が立つ丘のふもとのベンチで、番組スタッフの皆さんとともにボリュームたっぷりのロケ弁を美味しくたいらげた後、再び国道を北上し、いすみ市へ向かう。目指すは今回の旅の終着地、太東埼灯台だ。
太東埼と聞いてぴんとこない人でも、九十九里浜の名は知っていると思う。
太平洋へ向かって鋭利に突き出す関東最東端の銚子市、そのすぐ西隣の旭市から南へとゆるやかに続く九十九里浜は、日本列島最大級の砂浜海岸だ。なんでもその昔、源頼朝の命により一里ごとに矢を立てていったら九十九本になったというのでそう名付けられた、との説が有力らしい。そして太東埼は、長く大きく湾曲した九十九里浜の、最南端に位置する岬なのだった。
今から目指す灯台は、その岬の頂上に立っている。
2025.03.20(木)
文=村山由佳
写真=橋本 篤
出典=「オール讀物」2025年1・2月号