忙しい現代の女性たちの「なんだかしんどい」には、PMS(月経前症候群)が隠れているかもしれません。PMSなら、対策できることもあるはず。CREAとCREA WEBで、今こそPMSを知るキャンペーンがスタートしました!


 顔や体のむくみ、お腹や胸の張り、頭痛を感じ、「もうそろそろ生理かな」と思うことはないだろうか。痛みの有無にかかわらず、毎月感じる“月経前のサイン”があれば、PMS(月経前症候群)である可能性がある。小川真里子先生(東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授)は語る。

 「月経前に何らかの症状が現れ、月経が始まるとほぼ消失する。これを毎月繰り返していることがPMSと診断する最大のポイント。むしろ症状は何であっても、PMSの可能性はあるんです」

 PMSの症状を細かく挙げると200以上にもなり、多くが一般的な心身の不調とも重なる。それがPMSだと気づかないまま過ごしている女性も多いのだそう。

 「むくみ、肌あれなど美容面にも関わるもの、頭痛、腰痛など痛みを伴うもの、イライラ、気分の落ち込みといったメンタルの不調、不眠、倦怠感など日常生活に影響をもたらすもの。パッと挙げただけでもこれだけ多岐にわたりますし、中には、お腹が張ってボトムスのボタンが留まらなくなる、口内炎がいくつもできるという人もいます」

 「私はそういう体質だから」で済ませていたことの中に、PMSの症状が隠れているかもしれない。

 「改善への第一歩は、症状と月経の関連性をはっきりさせること。月経の開始日を手帳に書いたり、専用のアプリで管理している女性は多いので、同じように、症状が現れたら簡単でいいので手帳やアプリにメモしておきましょう。むくみ、イライラ、頭痛など自分に起こりやすい症状のマークを決めておくと分かりやすいですよ」

月経前の時期を特定するのが難しいときは、どうする?

 毎月感じている不調と月経の関連をよりはっきりさせたい人には、基礎体温を測るのがおすすめ。

 「PMSの診断に基礎体温は必須ではありませんが、基礎体温から月経が予測できるので、月経周期が安定しない方でもPMSの対策がとりやすくなります。また、出産を考えている方にとっては、基礎体温によって毎月きちんと排卵が起こっているかを知ることができて、これからの人生設計にとても役立ちます」

 基礎体温は、婦人体温計で起床後すぐに測るのが基本。測ったデータをスマホのアプリに送信、記録するシステムなどを活用すれば、そう手間はかからない。

 女性の体温は、女性ホルモンのバランスによって低温期と高温期に分かれる。排卵が起こると高温期に入り、そこからおよそ2週間後に月経が始まる。PMSの症状が現れるのはこの2週間。

 「基礎体温の変化と症状を照合すると、月経の何日前からこんな症状が出やすい、という自分のパターンが見えてきます。『このあたりは無性にイライラするから、人と会うのは控えよう』など、対策やスケジュールを立てやすくなり、結果、生活全般のクオリティも上がっていきますよ」

 PMSは、改善が期待できるもの。そう認識することが、快適な毎日を手に入れるスタートになる。

 「医師の立場からは、お悩みがあればぜひ受診を、とお伝えしたいです。『この程度で病院へ行っていいの?』という不安には、『いいんです!』と声を大にしてお答えしますが、気が進まない方は、まずセルフケアから取り組まれるのもいいかと思います」

 セルフケアのキーワードは、自律神経。アクセル役の交感神経とブレーキ役の副交感神経のバランスをとることによって、PMSの改善につながるケースが多い。

 「現代人は交感神経が優位になりがちなので、興奮状態を落ち着かせる作用のあるアロマは手軽でいい方法だと思います。PMSには柑橘系の香りがよいという報告もありますが、リラックスできる好きな香りが一番。また、食事、運動、睡眠を整えることもやはり大切。日常の選択をひとつ替えてみるだけでも、PMSが軽減するきっかけになりますよ」

 むくみのケアも、PMSの症状を鎮めるのに役立つという。

 「むくみもイライラもPMSの代表的な症状ですが、実は、むくみが強い人ほどイライラなどの否定的な感情が強い傾向があることが分かっています。頭痛やお腹の張りなども、むくみが関係していると言われています」

 血行をよくする、体を冷やさないなど、むくみ対策を心がけたい。

 「また、最新の研究で、ビタミンEの一種であるγ(ガンマ)-トコフェロールやγ(ガンマ)-トコトリエノールには、むくみを軽減する働きがあることが分かっています。これらを含むサプリメントも市販されていますので、忙しい方にとってはよいチョイスかなと思います」

 環境の変化や人事異動など、ストレス源から離れることでPMSが改善するケースは多いが、それがかなわない限り、PMSが自然に治ることは残念ながら少ない。

 「仕事優先で自分のことは後回し。PMSの症状をこじらせてしまうのは、真面目な頑張り屋さんに多い印象です。でも、PMSを我慢することで、仕事の効率は下がります。現代はPMSも月経も自分でコントロールできる時代。1か月をまるまる快適に過ごせると、生き方まで変わるはずですよ」

2022.06.15(水)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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