PMSを知っていますか? 「月経前症候群」(PreMenstrual Syndrome)、生理の前の不調、ということまでなんとなく知っていても、自分にはあまり関係ない、と思っている人が多いようです。
PMSの症状は、仕事や家事の効率、さらには人間関係にまで影響を及ぼす可能性があり、本人だけの問題にとどまりません。
むくみ、頭痛や腹痛、腰痛などの不快な痛み、イライラや憂鬱の気分の浮き沈み……定期的にやってくるいろいろな不調を、「私の体質だから」「生まれつきだから」、仕方がないと諦めていませんか?
「なんだか不調」というお悩み、それ、実は、PMSかもしれません。そして、PMSは、緩和可能なのです。
CREAがPMSを考えるシリーズ第1回、PMSに詳しい医師・小川真里子先生に、まず基本のお話をうかがいました。
むくみ、頭痛、倦怠感、etc...。その不調、PMSなのでは?
CREA読者のお悩み ケース1
なんだかいつも不調です。朝からだるい日が多いし、気圧のせいなのか頭痛も多いし、よくイライラしています。病院に行くほどではないと思うんですが、仕事のストレスなんでしょうか……。(会社員 30歳)
――このお悩みに代表されるんですが、女性読者の方々に心身の悩みについて聞くと、健康で問題なし! という方は、まずいないんです。皆さん何かしら不調があって、頭痛、腰痛、肩こり……。仕事をもつ忙しい女性が多いので、ストレスも多いんだと思います。美容的にも、なんだか顔や脚がむくんでいるとか、何歳になってもニキビができるとか……。
小川真里子先生「それは、一度、PMSの可能性も考えてみるのもいいかもしれませんね」
――でも、「PMSがしんどい」と言う人はあまりいないんです。
小川先生「他の病気が原因という可能性もありますが、本当にPMSだとしても、まだまだ結び付けて自覚している方が少ないのが、PMSなんですよ」
――PMSにはどんな症状があるんでしょうか。
小川先生「PMSは、女性ホルモンの変動によって月経前に起こる不調のことで、症状は身体的なものから精神的なものまで幅広く、すべてをリストアップするのが難しいほど。むくみ、頭痛、倦怠感、不眠、便秘などはPMSの代表的な症状ですが、どれも一般的によくある不調ですよね? だからこそ、それらの不調とPMSを結びつけて考える、という発想に至らない方が多いんです」
ーー生理は明らかに自覚ができますが、生理前だと、自分の体が「生理前」であるという認識がないまま、不調とともに過ごす、という人も多そうですね。
小川先生「まさに、PMSだと気づかずに過ごしている人が多いのです。さらに、多くの方が10代前半で初潮を迎え、年月を重ねる中で、体の変化と不調を受け入れ、慣れてしまっているのだと思います。月経前に頭痛がしても『私はそういうタイプ』と受け入れて我慢してしまう。婦人科を受診して治そうと考える人も、そもそも、その不調が治せると知っている人も、少ないのではないでしょうか」
この不調がPMSなのか、自分でわかる?
――不調がPMSによるものかどうか、自分で判断できるものですか?
小川先生「チェックするポイントは2つあります。まず、月経の3〜10日ほど前から症状が出て、月経が始まると波が引くように症状が治まっていくこと。そして、毎月このサイクルを繰り返していること。この2点に当てはまれば、どんな症状でも、PMSの可能性が高いです。手帳にメモするなどして、体調やメンタルの不調と月経の関連性をみていくと、『私のこの不調はPMSかも』と気づけるはずです」
ーー原因がPMSだとわかれば、対処できることもありますね。
小川先生「不調の原因がPMSだとわかっただけでストレスが減って、結果的にPMSの緩和につながったケースも実際にありますし、今は低用量ピルなど、治療薬の選択肢も多いのです。市販のサプリメントなどを活用して、自分に合った対策を探すこともできます。とはいえ、自己診断だけでなく、遠慮なく病院に行って相談していただきたいです」
ーーPMSは緩和していけるのだと、もっと皆さんに知ってほしいですね。
小川先生「それに、月経前に出やすい症状を把握すると、体調を考慮したスケジュール管理がしやすくなり、余計なストレスを抱え込まずにすむメリットもあります。たとえば、月経前に頭痛が起こりやすいならスケジュールを詰め込みすぎないようにするとか、気が散って集中しづらいなら細かい作業がその時期に集中しないようにやりくりするとか、体調に合わせて予定を調整するだけで、毎日の快適度が向上するはずですよ」
2022.05.23(月)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日