身近な人にぶつけてしまう、イライラの正体は?

CREA読者のお悩み ケース2

すごくイライラしてしまう時があります。家族にもイライラして言葉がきつくなってしまったり。仕事でも何か言われると、イラッとしているのが顔に出ていそうで、いつかトラブルにならないか心配……。いつも穏やかな人でいたいのに、自己嫌悪です。(会社員 28歳)

――またこれは別の女性、20代の方です。イライラして、しょっちゅう家族に当たってしまっていて、ずっと、「自分の気質」、「自分にこらえ性がないのが悪い」と思ってきたのが、イライラは生理前に起きると気付いたそうです。

小川先生「PMSのせいで、ちょっとしたことにもイラ立って、家族に当たってしまう方は多いんです。そんな”被害”を被っている周囲の人のほうが、本人よりも先にメンタルのPMS症状に気づくパターンもあります。家族やパートナーに『もしかして、生理前?』と言われて、自分のイライラが月経前に集中して起こることに気がつき、受診するきっかけになったという方もよくいらっしゃいます」

――この方は、最近、クリニックに行ってPMSと診断されて、お薬を飲み始めたら、あきらかに効果があったそうです。生活が楽になって本当によかったと言っていました。

PMSが起こるのはなぜ? 「むくみ」が鍵!?

小川先生「なぜ月経前に不調が表れるのか、実はまだ解明されていないことも多いんですよ」

――えっ、女性ホルモンの変動のせいではないんですか?

小川先生「そうですね、不調が出やすいのは女性ホルモンの中でも黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増える黄体期なので、PMSと何か関係しているであろうと考えられてはいますが、具体的にどう作用しているのかまでは解明されてはいないのです」

月経が始まり排卵が起こるまでの約2週間が卵胞期、排卵後から月経が始まるまでの約2週間が黄体期。不調が出やすいのは黄体期で、この時期には女性ホルモンの中でも黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えるため、PMSと何か関係していると考えられています。
月経が始まり排卵が起こるまでの約2週間が卵胞期、排卵後から月経が始まるまでの約2週間が黄体期。不調が出やすいのは黄体期で、この時期には女性ホルモンの中でも黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えるため、PMSと何か関係していると考えられています。

小川先生「また、むくみというのがPMSの症状のひとつですが、このむくみが頭痛やイライラなど、他の症状を引き起こしている可能性もあるんですよ」

ーーむくみが、イライラの原因になるんですか!

小川先生「体内に水分が溜まるのがむくみです。その水分貯留が頭痛を引き起こしたり、イライラを引き起こしたりする可能性もあると考えられているのです。実際、月経前の『むくみの症状』と『否定的な感情』に相関が見られたという調査があります」

閉経前の女性68人を対象に月経前の症状についてアンケート調査を行ったところ、「むくみの症状」と「否定的な感情」に関連がみられました。むくみが不快で感情面にも悪影響を及ぼしたかどうかといった因果関係は不明ですが、気になるところです。 (産科と婦人科:83(12) 1434-1439, 2016)
閉経前の女性68人を対象に月経前の症状についてアンケート調査を行ったところ、「むくみの症状」と「否定的な感情」に関連がみられました。むくみが不快で感情面にも悪影響を及ぼしたかどうかといった因果関係は不明ですが、気になるところです。 (産科と婦人科:83(12) 1434-1439, 2016)

ーーむくみ、つまり水分が、体内でパンパンになって痛みを引き起こすのは、言われてみればイメージが湧きます。でも、むくみとイライラの関係は意外でした!

小川先生「だから、PMSには、むくみ対策も鍵になりますね。ビタミンEの一種である『γ(ガンマ)-トコフェロール』、『γ(ガンマ)-トコトリエノール』に、むくみを軽減する作用が期待できるとされているので、配合されたサプリメントを活用してもいいと思います」

ーー仕事が忙しすぎるとか、ストレスなどもPMSに関係ありそうですよね。

小川先生「ホルモンの分泌をコントロールしているのは自律神経ですから、その働きと何か関連があると考えるのは自然なことだと思います。さらに、疲労やストレスなどの環境要因がPMSの症状をより強くしてしまうのではとも考えられています」

ーー生活の中で気を付けるといいことはありますか?

 小川先生「自律神経のバランスを保つアプローチを心がけたり、ストレスを軽減する工夫を施すだけで、PMSが軽減するケースもありますよ。朝起きたら朝日を浴びるとか、ウォーキングをするとか、できることはたくさんあります。私が特におすすめしたいのは、1日のうち10〜15分でいいので、何もしない時間を作ること」

ーー何もしないのが意外に難しかったりしますよね…。

小川先生「気が付くとスマホをいじっていたり、頭では仕事のことを考え続けていたり、現代の生活では刺激やストレスから離れることが思いのほか難しいですね。だからこそ、10~15分の一定時間、強制的に自分と向き合う瞑想のような時間を持ってみてください。体の力を抜いて頭を休めることが、自分をいたわることにつながりますよ。何よりまず、PMSは緩和できるのだと認識して、積極的に対処していくことをぜひ検討してみましょう。そして、ご自身がしんどいと思うなら、いつでも病院に行っていいのだと、ぜひ覚えていてくださいね」

第2回は、6月15日頃公開予定です。

●お話を聞いたのは……
東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授
小川真里子先生

福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学産婦人科を経て、2007年に東京歯科大学市川総合病院産婦人科助教、11年同講師、16年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本心身医学会心身医療専門医、日本女性心身医学認定医などの資格を持ち、PMSや更年期などの診療にあたる。

月経前の心身の不調、「PMS」(月経前症候群)についてもっと知りたい!

これはPMSなの? PMSとどう付き合っていけばいい?
頼りになる情報満載のサイト、大塚製薬「PMSラボ」へ!

https://www.otsuka.co.jp/pms-lab/

わたし、からだ
上手にやさしくつきあえる毎日を。

女性の健康推進プロジェクト

https://www.otsuka.co.jp/woman_healthcare_project/

大塚製薬は、科学的根拠に基づく製品や情報提供を通じて女性の健康をサポートしています。

Column

私たちの体を守りケアする
フェム・ヘルス研究室

女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。

2022.05.23(月)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日