月に一度やってくる生理に対し、様々なお悩みを抱える女性は多いはず。
「CREA保健室」の第2回は「生理周期」について、婦人科専門医の福山千代子先生に伺いました。誰もがストレスと向き合う今、生理周期の乱れやPMSと上手につき合っていく方法とは?
春の終わりに生理不順になる女性が多い理由
クリニックのほか、校医として月に2度ほど大学に勤務している福山先生。例年5月~6月は生理不順の学生が増える傾向にあるという。
「親元を離れて新たな生活を始めるなど、4月に発生した環境変化の影響が、ひと月遅れで身体に現れる感じでしょうか。本人の意識としては感じていなくても、身体にとってはストレスなんですね」
同じ理由で、新入社員や就活中の学生、大学受験中の学生も、生理周期が乱れるケースは多いという。とはいえ過度に心配する必要はなく、ストレスフルな時期が過ぎたり、環境に慣れてくると自然に治るケースも。
「ストレスがかかると、生理が不順になる人は一定数います。若い世代のほうがストレスに弱いかというと、一概にそうともいえない。個人差が大きいんですね。一時的に生理が来なくなるのは、ストレスと対峙するために“今は妊娠している場合ではない”と体が排卵をストップするためです。体を守るための現象といえますが、本来生理は月に一度発生するものですので、まずは自分の周期を把握することが大切です」
生理周期は25~38日。まずは自分のリズムを知る
日本産科婦人科学会が提示する生理周期の目安は25日~38日。短い人は約3週間、長い人は1カ月+1週間と、2週間近く開きがある。
「患者さんで時々“前の生理がいつ終わったか分からない”という方がいます。始まった日と終わった日くらいはメモして頂けると、自身の体のリズムを知る手がかりになるんですね。将来的に妊娠を希望している場合“排卵しているか否か”も重要です。たとえ周期が25日~38日の間に入っていても、排卵していない場合は、治療が必要なこともあります」
排卵の有無も含め自身の生理周期を知るには、基礎体温計を用いるのが基本だ。朝起きてすぐの静穏時に計測すると、月経中から次の排卵までは低温期が続き、排卵後は高温期に移行する。この変化が見られずに低温期が続く場合、無排卵の可能性があるという。排卵を確認するだけなら尿や唾液を用いた排卵チェッカーもあるけれど、体のリズムを知るためには、基礎体温計のほうが分かりやすい。
「生理周期は年齢とともに変化します。初潮を迎える思春期は、ホルモンのバランスが安定せず、間が空くことも多い。更年期になると一旦周期が短くなったあと、しばらく間が空いて閉経を迎えるケースがみられます。個人差はあるものの、20代~40代前半の“成熟期”といわれる期間は、一定の周期を繰り返すことがほとんどです」
ストレスによって、生理が長期間来なくなったら
ところが、前述のように著しく環境が変わったり、過度のストレスを感じると、ホルモンのバランスに影響を及ぼして一時的に生理が来なくなることも。
「3カ月以上生理が来ないと、さすがに心配になる方もいらっしゃいます。その場合は一度ホルモン剤を投与して、月経を誘発するのも1つの方法です。もちろん、専門医がきちんと検査をした上での治療になります」
検査の結果、子宮内膜が厚みを増していたり、排卵の気配があれば、様子を見ているうちに生理が自然に来ることも多い。一方で数カ月生理が訪れず子宮内膜の厚みも薄い場合は、「このまま放っておいても生理が来る気配がないので、いちど薬で誘発しましょうという提案をします」と、福山先生。
「薬を投与していちど月経を誘発すると、その後は生理周期が整うケースが多いんですね。投与の方法は、注射や薬の内服等の選択肢があります。子宮内膜の厚みやその方のホルモンのバランスによって、なるべく身体に負担をかけない形で処方します」
2022.03.06(日)
文=宇野ナミコ