月に一度やってくる「生理」のお悩みについて、婦人科専門医の福山千代子先生にお話しを伺いました。

 第1回は、意外と知らない「経血量」のお話。自分の経血が「多いか少ないか」は、分からない人も多いはず。経血量が多い場合、実は背後に病気が隠れている可能性も……!?


人と比べられないから、自分では判断しにくい「経血量」

 「自分の経血量が、果たして多いのか少ないのかは、非常に分かりにくいんです」と、福山先生。確かに、人と比べることはまずないため、自分の生理が平均的か否か、理解している人はほとんどいないのでは?

「問診票で経血量の項目に“普通”と回答していても、エコーで診断すると、平均量よりはるかに多い方がいます。“昼間も夜用のナプキンを頻繁に変えませんか?” と聞いてみると、“はい”とお答えになる。逆に“多い”と回答した人が、実際は平均的なケースもあり、個人の思い込みの部分が大きいんです」

 経血量の基準は、1回の生理(約7日間のトータル量)につき、20ミリリットル~140ミリリットル。おおよそ大さじ1強~小さいヤクルト2本強に相当し、基準といいながら実に7倍も開きがある。

「生理の日数も3日~7日、出血の仕方もまちまちです。量が多くて数日で終わる人や、少なくて日数が長めの人など個人差があり、何が平均なのかは難しいところです」

 経血量が少ないからといって、妊娠しにくいとは限らない(ただし排卵しておらず経血量が少ない場合、将来妊娠を望むなら、治療が必要になることも)。総じて経血量は、少ないより「多い」ほうが、注意が必要であるという。

経血量が多い場合「貧血」や「子宮筋腫」の可能性が

 経血量が多い場合、どのようなリスクがあるのだろう?

 まずは一旦、生理の仕組みをおさらいしたい。子宮の内側は「子宮内膜」という組織で覆われていて、月に一度発生する排卵に合わせ、その厚みを増していく(受精卵が着床しやすいように)。受精卵が着床しなかった場合、排卵から約2週間後に子宮内膜が剥がれ落ち、子宮口から排出される。これが、生理とよばれる出血の仕組みだ。

「経血は厳密には“血液”ではありません。しかし子宮内膜には、血液と共通の鉄やヘモグロビンが含まれており、生理によって体外に排出されます。経血量が多いと貧血になりやすいのはこのためですね。経血量はおおよそ子宮内膜の“面積”に比例しています」

 子宮内膜に「子宮筋腫」があると、その分表面積も広くなるため、排出される経血も増える傾向にある。また「子宮腺筋症」に罹患していると、子宮自体が肥大して同じく経血量が増えやすい。このように経血量が多い場合、背後に何らかの病気が隠れている可能性が高いのだ。

「婦人科を受診すれば原因を診断できますし、こと貧血に関しては、ピルを使用して生理の量を減らすことによって改善が期待できます。ところが、経血量については誰とも話さない事柄であるため、不調に気づかない方が多いんです」

2022.03.05(土)
文=宇野ナミコ