ホルモンに大きく影響される私たちの体を理解して、快適に暮らすめための連載!
今メンタルの不調に悩む女性が増えています。心のSOSを放っておくと、回復に時間がかかることになるかも。そうなる前におすすめのセルフケアと、医療の力を借りる時のポイントを専門のドクターに伺いました。
どうしようもなく気分が落ち込む、やたらとイライラして当たり散らしてしまう、クタクタに疲れているのに眠れない……。こんな不調に悩まされる女性が増えている。「やはり、コロナ禍の影響は大きいと思います」と指摘するのは、精神科医の福永伴子先生だ。
「メンタルは不況や災害など社会情勢の影響を多かれ少なかれ受けます。コロナ禍もそのひとつ。自分や家族の仕事が減ってしまったり、失われたりした人はもちろん、それほど直接的な影響はなかったとしても、鬱々としたものを感じている人はかなり多いと思います」
コロナ禍で外出が制限され、リモートワークになった結果、人と直接会う機会は減り、好きなことが自由にできない生活が続いた。
「在宅時間が増えたことで孤独感に苛まれる人、夫や子ども、親との関係性の変化に悩む女性が多い。以前なら、同僚や友人との雑談でガス抜きができていたのに、コロナ禍でほとんどできなくなった。それによって溜まったストレスがメンタルに影響を及ぼしているのでしょう」
女性ホルモンの変動も心に影響を及ぼす要因
ストレスだけが原因ではない。そもそも女性の場合、メンタルに不調をもたらす大きな要因は、女性ホルモンの分泌量の変動だ。
「最近学会でも大きく取り上げるようになったPMDD(月経前不快気分症候群)。生理前になるとだるさやむくみ、肌荒れなどがみられるPMS(月経前症候群)の中でも、特に精神的な症状が強く、日常生活に支障をきたす場合はPMDDと診断しています」
30〜40代はホルモン量の変動が特に激しい妊娠・出産を経験する人も多い年代。加えて40代後半に入ると、プレ更年期の症状に見舞われる人も出てくる。
「昔より仕事をもつ女性が増え、生理でつらいからといって、家で横になっていられない。その結果、女性の心や体にかかる負担は大きくなっているのです」
生理痛をはじめ、体の不調がもたらす心の不調もある。
「生理痛だけでなく胃痛や頭痛など、体の痛みは大きなストレスになります。解消するには原因の治療と痛みのコントロールしかない。できるだけ早い治療が、心の不調を防ぐためにも大切です」
さらに秋から冬にかけて増えてくるのが、季節性の不調だ。
「ウィンターブルー、いわゆる『冬季うつ』と呼ばれるものです。通常のうつ病と異なり、過食や過眠など、動物が冬眠に入るような症状が特徴。この場合はできるだけ光を浴びる時間をつくるよう指導すると、症状が改善されるケースが多いです」
毎朝必ずカーテンを開けて日光を浴びる、リモートワークの日もコンビニに行ったり、散歩をしたり、意識的に外出をする。小さな行動を習慣にすることで、鬱々とした気分が少しずつ上向いてきたなら、ほっと一安心だ。
「しんどい、やる気が出ない、生きづらい、と感じるのは誰にでも起こり得ること。ただし、放置すると、いつの間にか心の病気になっている危険性もあります。そうなってしまう前のセルフケアで、少しずつメンタルを整えていくのが大事だと思います」
2022.01.29(土)
Text=Miho Katsuki
Illustrations=Haruhi Takei