
“日本列島の南に位置する太平洋の水が盛り上がり、太平洋周辺の国に東日本大震災の3倍はあろうかという大津波が押し寄せる”。漫画家のたつき諒先生は、著書『私が見た未来』の表紙に2011年の東日本大震災を思わせる災害を夢に見たこと、その後 2025 年 7 月にも大災難が起こる夢を見たと記し、世間を驚かせました。
一方、怪談と説法を掛け合わせた怪談説法で名を馳せている日蓮宗光照山蓮久寺の住職・三木大雲さんも、2024年に刊行された著書『お経から読み解く未来予言 仏教コード』の中で、2025年に大災厄がやってくると予言したことで大きな話題を呼んでいます。
6月初頭、そんな2人がついに惹かれ合うように対面を果たしました。インタビューの後篇では、たつき先生との対談を経た三木住職に、いつ来るかわからない大災害に備えるために必要な心構え、そしてそうした仏教の教えを人々に説くにあたり三木住職自身がどんな工夫をしているのか、さらに不安の時代を迷わずに生きる道しるべについて聞きました。(前後篇の後篇。前篇を読む)
人と“善き友”となる――災害に備えるべきは物資だけではない

――前篇では災厄後の人々の行動や心がけで「大難を小難に、小難を無難に」できるとおっしゃっていましたが、防災意識を高めるという点で三木住職は相当な努力をされていると聞きました。
三木住職 お経をあげているのはもちろんですが、自分の住む蓮久寺に大量の水や救急キット、あとは簡易トイレを備蓄しています。6月にこうしてお話しする場を設けたかったのも、災害がいつ起こるかわからない以上、急がなければならないという強い危機感によるものです。
今、政府は大量の備蓄米を放出してしまっていますが、本来必要な有事の際に食糧が不足するのではないかと危惧しております。何かあったら政府が助けてくれるとお考えの方も多いかもしれませんが、必ずしもそうした手助けがすぐに届くとは限りません。大切なのは自分の身は自分で守るという気持ちと、人のことを自分と同じくらい気にかける心構えです。
――「人のことを自分と同じくらい気にかける心構え」、これは備蓄などの物理的な準備と同じくらい備えておくべきことのように思えます。
三木住職 災害の際に必要なのは人を助け、人と分け合うことです。ですが、損得勘定が優先され過ぎていると、こうした行動を自然にとることができない方もいることでしょう。
とはいえ、分け合えるだけの心の余裕をまず持っておかなければ、助かるものも助けられません。例えば「ご近所のあそこはおばあちゃんが一人暮らしだったな」とか「あそこのご家庭は小さなお子さんが多かったな」とか把握するだけでも違います。そこからもう一歩進んで「震災が近いという声もあるので、もしものときは手伝いますよ」とお声がけするだけでも“気”が繋がると思うのです。
――『仏教コード』の中で語られていた「阿難尊者(あなんそんじゃ)」のエピソードにも通じますね。
三木住職 お釈迦様が自身の肉体が亡くなる際に、十大弟子の中でも一番出来が悪かったとされる阿難を連れて最後の旅に出たときのお話ですね。横になっておられるお釈迦様に阿難が「誰とでも善き友になるように努めて、そして善き友となり、その善き友に囲まれて暮らすことは、仏教の教えの半分くらいを理解したことではないでしょうか」と問うと、お釈迦様は「阿難よ。あなたは大きな勘違いをしている。誰とでも善き友になるように努めて、そして善き友となり、その善き友に囲まれて暮らすことは、仏教の半分ではなく、それこそが仏教の教えの全てなのです。よく理解しましたね、阿難」とお答えになったのです。まさに、この阿難尊者のような理解が必要とされています。
2025.06.21(土)
文=黒影苑生
写真=志水隆