語るべきことを語るべきタイミングで語る……お釈迦様に学ぶ姿勢とは

――三木住職は7月に大きな災厄が来る可能性について、さまざまな媒体で警鐘を鳴らしていらっしゃいますが、発信する際に心がけていることはありますか。
三木住職 仏教には「対機説法」という考え方があります。これはお釈迦様ご自身がお話をされる際に心がけていた姿勢で、相手の能力や理解力、状況などを踏まえた上で話をすることです。対機説法の「機」とは何かというと、これは話をする相手の成長度や成熟度のようなもので、これを見極めつつお話をするのが大切なのですが、私自身、まだまだ学んでいる最中ですね。
というのも、先日私は東北で震災に遭われた先輩のお坊さんに、「7月に震災が来る、と私は思いますので、お気をつけくださいね」とお電話したことがあります。ですが、その方は電話を持つ手が震えているかのようにお声を詰まらせてしまったのです。「ああ、これは伝えるべきではなかった」と深く反省しました。
――簡単そうに見えて、実践するのはとても難しいのですね。
三木住職 非常に難しいです。配慮をせずに思っていることをワーッと語ってしまうと、受け手によってはやけになったり、それこそ小さなお子さんなどは過度に不安を抱えたりすることにもつながってしまいますからね。
私が普段「怪談説法」というスタイルで、怪談という多くの人に興味を持っていただけるものを入り口に、お釈迦様のお言葉を伝えているのも、実はこの「対機説法」を実践しているからにほかなりません。
2025.06.21(土)
文=黒影苑生
写真=志水隆