
おりものは下着を汚す厄介者、ではなく、女性の体を守ってくれる大切な存在。忘れてしまいがちなおりものの役割をおさらいして、体との付き合い方をアップデートしましょう。
おりものは、腟の守り神
「おりものは、腟の守り神。腟内部から常に分泌されていて、腟内の潤いを保ち、汚れを排出、バイ菌の侵入を防ぐなどして、女性の体を守ってくれています」
そう教えてくれたのは、産婦人科医の八田真理子先生。月経のある女性にとって、おりものは女性ホルモンがきちんと巡っていることを示す貴重なサインでもある。
「おりものは女性ホルモンと密に関係し、月経周期と連動して変化します。月経後はサラッと透明なおりものであまり気になりませんが、排卵期には指に取るとのびる『のびおり』となって精子を迎え入れやすくし、その後は腟に蓋をするかのように白く濁り、空気に触れると黄色くベタッとしてきます。
そして、妊娠が成立しなければ月経が起こり、子宮内をリセットする。この毎月のサイクルが大きく乱れることがなければ、ホルモンバランスにも問題がなさそうと判断することができます」
毎月のサイクルに問題がない場合でも、自分のおりものの状態が正常かどうか、不安に思っている人は少なくない。
「人によって汗のかきやすさが違うように、おりものの量・色・ニオイは個人差が大きいです。その上、恋愛映画にキュンとしたり、セックスをしたりなど性的な刺激があると一時的に量が増えたりもします。
大切なのは誰かと比較するのではなく、いつものおりものの状態と比べて、量が増えた、色が違う、ニオイが強くなったと感じるかどうか。今はネットの情報で自己診断する方も多いですが、予想と受診結果が異なるのはよくあること。気になる時は、受診をするのが安心でしょう」
◆月経周期と正常なおりもの
月経周期で変化するおりもの。正常な状態はほぼ無色透明、ニオイもない。
【月経後】
量が少なくサラッとしている。
【排卵期】
水溶性で透明、量が増えて伸びるようになる。「のびおり」と呼ばれることも。精子を子宮内に導いて妊娠しやすくするため、のびおりになる。
【排卵期後~月経前】
量は減り、白色となり、空気に触れて時間が経つと黄色くベタっとする粘りの強いおりものになる。
おりものは健康のバロメーターとも言われるが、おりものの量・色・ニオイの変化の裏には、病気が隠れていることが多い。
「腸内フローラ(細菌叢)と同じように腟内にもフローラがあり、健康な時の腟内部はデーデルライン桿菌という善玉菌によって酸性に保たれています。しかし、寝不足、疲労、ストレスなどでホルモンバランスがくずれると、腟内フローラのバランスもくずれて酸性を保てなくなり、悪玉菌の増殖やバイ菌の侵入を許してしまいます。
例えば、日和見菌のカンジダが増殖すると腟カンジダ症になり、おりものは白っぽくポロポロとしたカスのように変化します。性感染症でもっとも多い性器クラミジア感染症は、おりものが多少増えたかな、いつもより黄色っぽいかなという程度で症状があまり強く出ないこともあるので、日頃からおりもののチェックをして、小さな変化にも気づけるようにしておきたいところです」
2025.05.15(木)
文=今富夕起
イラスト=竹井晴日
CREA 2025年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。