衝動とか好奇心にはブレーキをかけたくない

ものづくりを「諦め」と表現するのはおもしろいけれど、絵を描くことも、歌を歌うことも、映画を撮ることも、すべてのんさん自身が決断し、切り拓いてきた道。
「人と比べて、欲求にあらがう忍耐力がなかったんだと思います」
これまでの道のりを、振り返ったのんさんは、またもおもしろい言葉をチョイスした。自分のものづくりへの欲深さを受け入れ、開き直った彼女の背筋はピンッと伸びていて、清々しいほどに美しい。
「もしも時間に余裕がないなら諦めて寝てしまえばいいのに、私は夜更かしをしてでもものづくりをしたくなっちゃう。でもそのやり方は性分に合っているし、自由に選択して決断できている今の自分は、すごく好きです。
これからも衝動とか好奇心にはブレーキをかけたくない。映画づくりだって、この1回で終わるつもりはありません。見てくれる人にどう届くかまで責任をもっていたいし、つくることを貫き通していきたいです」
Their Seeds
ものをつくりたいという欲求にブレーキをかけたくない。
大変だけど、そのやり方が性分に合ってるし、好きな自分でいられる
映画「Ribbon」

コロナ禍の2020年。いつか(のん)が通う美術大学では、卒業制作展が中止になってしまう。悲しむ間もなく作品を持ち帰ることになった彼女は、心配してくれる父や母とも衝突し……。未来を奪われた美大生の再生の物語。テアトル新宿ほか全国公開中。

あたらしい暮らし 楽しい暮らし
2022.04.28(木)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=Satoru Tada
Styling=Izumi Machino
Hair & make-up=Shie Kanno
CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。