金髪ごくせん生徒は名バイプレイヤーになっていた

 さて、速水もこみちの最近の作品は「緊急取調室」の他にも、完璧に見えて実はドMな上司(「この男は人生最大の過ちです」)や人形・みちゅこを愛する人形愛好イケメン(「結婚できないにはワケがある。」)というクセが強すぎるイケメン上司を続けて演じ、好評を博している。私がコロナ禍の期間、レンタルで見た映画「海月姫」(2014年)の運転手、花森よしお役も最高だった。

 この人の包容力はどこから来るのだろうか。ときには整い過ぎた顔を活かし、ときにはそれを武器にせず、堅実に演技の幅を広げている。

 私が「苦労しそう」なんて勝手に思っていた金髪のごくせん生徒は、[真面目な芝居もコミカルな芝居もこなせるイケメンバイプレ](映画「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」の紹介コメント)になっていた。

 想像ではあるが、彼はここまでくるのに美形だからこそいろんな悔しい思いもしたのではなかろうか。それを静かに受け入れ、あのドーナツ動画でギリギリまでオレンジを擦っていたように、自分ができることをプラスし続けてきたのだろう。

 全国のもこみちファンから「昔っからいい俳優さんだったよ遅いねーん」と裏手パンチが入っていることを右肩に感じている。そのツッコミに、ビー・ドゥゲーザ(土下座)……。

 「好きになってはならぬ」と思い込んでいた人はとても魅力的だった。時間はかかったが、それに気づくことができて本当に良かったと思う。

 私が愛するもつなべコンビが活躍する緊急取調室はseason4で解散してしまったが、いつの日かスペシャルで帰ってきてほしい。そしてこれからも、主役としても脇役としても素晴らしく美味しく味付けをする、彼のドラマを見ていきたい。

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●田中稲note https://note.com/ine_tanaka/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2021.10.15(金)
文=田中 稲