
「青春」を感じるエンタメが大好きだ。若き血潮、迷いや戸惑い、制御できない心、そして孤独感。
凄まじく賞味期限が短い桃の如く、生命の水分をたっぷり含んだ甘い音楽や映像の眩しさよ!
当然、それを永久保存させたような大林宣彦監督映画は大好きだ。

私の学生時代、80年代はアイドル映画花盛り。
嗚呼、行った行った行きました。ザッと思い出すだけでも、たのきん映画『ブルージーンズメモリー』に『ハイティーン・ブギ』、小泉今日子の『ボクの女に手を出すな』、菊池桃子の『パンツの穴』まで見に行った覚えがある。オー、我ながらノンジャンル!
大林宣彦監督の『時をかける少女』もその一つ。当時は監督の名で作品を選ぶなどクリエティブな目線など持ち合わせておらず、
「角川三姉妹モノはとにかく押さえておこう!」
というミーハー根性のみ。いつから“大林監督作品”を追うようになったのか、スライド時期をサッパリ覚えていない。
そんな自然な流れだったから、2020年4月10日(金)の大林監督死去のニュースが流れたが、永遠のお別れとどうしても思えないのだ。
実は監督は異世界との連絡口を知っていて、撮影の拠点を向こう側に移しただけなのではないか。いつかまたひょっこり新作を持って戻ってきてくれるんじゃないだろうか。
とりあえず、2020年4月18日(土)には『時をかける少女』が放送されるという。観よう。とにかく観よう、と思ったのに、残酷な「関東ローカル」という文字が! くっ、私が住むのは大阪だ。
ならば、せめて心だけでも。さあ、運命の日「土曜日の実験室」へタイムリープ!
年を取るほどわかる原田知世の瑞々しさ

『時をかける少女』は1983年公開。私は当時中学生。映画館で観たが、すさまじく原田知世がカワイイという記憶しかなかった。
感性が一番瑞々しい時期にも関わらず、こんな最高の映画に心動かされなかった私の薄らボケ! 当時にタイムリープして己の後頭部をハリセンで殴りたい。
年を重ねてから見ると、どれだけ金を積もうが手に入らない「思春期の女の子限定の神々しさ」がシャワーとなって降りかかってくる感覚……。画面が発光している。眩し過ぎてギブミー、サングラス!
18日の放送分は、エンディング・エンドロールがカットされていたという。ぬおお時間の都合で重要な部分がカットされる「映画の地上波放送あるある」!
今回が『時かけ』初見だった方は、ぜひレンタルでも何でもいいので見て確認してほしい。素に戻った原田知世の笑顔に魂を抜かれるので、込み入った仕事が終わってからがおススメだ。

大林監督は、原田知世の佇まいは「時代と合わない」と思い、この作品で引退させようとしていたという。
思い返してみれば、『時かけ』公開年の1983年といえば、「ババア金出せよ!」の怒号が鳴り響くドラマ『積木くずし』が大ヒットしている時期。
学校荒廃期の真っただ中で、当時私はかなり山奥の中学校に通っていたが、それでもシンナーを吸い恐ろしい形相になったヤンキー勢がおり、竹刀を持った先生が追いかけ回していた。
そんなご時世、一点の澱みもなく清らかな「原田知世」という存在は、ちょっとしたファンタジーに思えたのかもしれない。すごい時代だったなあ、1983年……。
2020.05.02(土)
文=田中 稲