キョンキョンの歌声に感じる やさしい湿り気

 2020年8月21日(金)から、キョンキョンの楽曲のべ726曲がサブスクリプションにて配信されている。

 私にとってキョンキョンは、「好き」だけでは語れない、複雑な存在である。同じ学校、同じクラス、隣の席だったとしても、接点ゼロ、ひと言も話さず卒業するタイプだろう。

 デカい図体でなにをやってもトロく、センスはダサいし個性も発揮できず、常に守り体勢で生きてきた私と、小さい体でガンガンに眩しいオーラを輝かせ、時代の先端を走るキョンキョンは、真逆。

 クサクサしているときに彼女のキラキラを見ると、あまりの違いに「ヘイヘイ私はウドの大木ッ」と自虐にアクセルがかかる、そんな危険な人でもある。

 ただ、彼女をグッと近くに感じる瞬間がある。それは、切ない歌詞が盛り込まれた歌を歌うとき。甘くウエッティな声で、ポツンポツンと言葉を置くように囁くキョンキョンの歌い方はスッと沁み入る。

 例えるなら、ものすごい肌触りの良い高級ティッシュに感じる、ソフトな湿気。このなんともいえない、やさしい湿り気はどこから出てくるのか? とティッシュの裏表をひっくり返してみたくなる、あの感じに似た不思議な柔らかさがある。

 そしてその声は、交流は面倒だが1人は寂しい「ぼっち」な心にそりゃもうやさしく寄り添ってくれる。秋の夜長、柔らかいビーズクッションでも抱いてゴロゴロ転がりながら聴くと、絶対癒やされる。断言しよう!

2020.09.17(木)
文=田中 稲