凶暴なモンスターが行き交う危険な世界で、未熟な少年は大人になる!

◆『ラブ&モンスターズ』(2021年)

 2021年の4月に配信されたばかりの注目作、『ラブ&モンスターズ』。タイトルからもわかるように、本作は奇妙で恐ろしい生物がたくさん登場するモンスター映画です。

 こういうと、こうしたジャンルに慣れていない人は「ちょっとグロテスクそう……」と身構えてしまうかもしれませんが、この映画の空気は非常にポップで爽やか。むしろモンスター映画より青春映画としての趣のほうが強いかもしれません。

 主演は、映画『メイズ・ランナー』で初主演を務めた新鋭のディラン・オブライエン。共演には、マーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で宇宙海賊ヨンドゥ役を演じた名バイプレーヤーの俳優、マイケル・ルーカーが出演しており、インパクト抜群の超ナイスガイを好演しています。

 ある日突然世界中に出現した多種多様な異形の危険生物たち。無政府状態となった世界で、人々は小さな地下コミュニティを各地に作りひっそりと暮らしていました。本作はそんなコミュニティで、スープ作りと無線機修理しか取り柄のなかった青年ジョエルが、ガールフレンドのエイミーに再開するため危険な旅に出るというストーリー。

 劇中には、軽トラほどもあろうかという巨大なガマガエル型モンスターや地を這う馬鹿でかいムカデ型モンスターなど、出会ったら固まってしまいそうな恐ろしい怪物がわんさか出てきます。が、単純に危険な存在というだけでなく、その世界に住む“生き物”としての丁寧な描写がなされており、それが終盤の展開にも活かされている脚本の巧みさも必見です。

 しかし、筆者がイチオシしたいポイントは、『ラブ&モンスターズ』というタイトルの、「ラブ」という部分のひとさじです。離れ離れの彼女に会いたい! ジョエルが危険に身を投じた利用は「ラブ(愛)」そのものであり、実にシンプルかつ共感できるものです。

 しかし、「愛」には様々な形と種類があるのは、大人になれば見えてくるもの。成長してそれに気づき、きちんと受け止める終盤のジョエルは「お前、マジで良い奴だなぁ……」と目頭が熱くなるはず。本作はスカッと楽しめると同時に、単純な物語で終わらない抜群のほろ苦さとあったかい優しさに満ちたオススメの一作です。

◎あらすじ

『ラブ&モンスターズ』

地球上の昆虫や海洋生物たちが凶暴化&巨大化してモンスターになってしまった世界。両親を失い、地下コミュニティで肩身狭く暮らしていた少年ジョエルは、運良く生存していた恋人エミリーの存在を知り、彼女のいるコミュニティまで、危険な旅に出る決意を固める。

2021.05.29(土)
文=TND幽介(A4studio)