●松居監督から声がかかるのを待っていたのに!

――そう考えると、14年に公演された「ごきげんさマイポレンド」は目次さんにとって転機となった作品ですか?

 『愛しのローズマリー』を観たことじゃなければ、そうなりますね(笑)。

「ごきげんさマイポレンド」は「3年間の活動休止中に、6人のメンバーが何をやってきたか?」という話を語るもので、これまでやってきた公演のなかで、初めて事実に基づいた作品。

 そういうことで、自分の中で3年間溜まっていたものを全部吐き出すことができたんです。

――目次さんを始め、これまで「ゴジゲン」の劇団員が、松居大悟監督作に出演されてなかった理由は何だったでしょう?

 僕らはてっきり、松居に指名権がないと思っていたんですが、どうやら変な男気というかストイックさから、あえて呼んでなかったようなんです(笑)。

「そうやって、自分の劇団員をキャスティングするのは違うじゃないですか!?」と、インタビューでは言っていて……。

 こちらとしては、お声がかかるのを待っていたのに!

――20年には大きな話題を呼んだ『アルプススタンドのはしの方』に厚木先生役で出演されます。これは「ゴジゲン」にも参加されている奥村徹也さん(劇団献身)繋がりでの出演だったのでしょうか?

 原作の籔 博晶さんと大学の同期だった奥村が脚本を書いたわけですが、原作の戯曲にはなかった厚木先生の設定を付け加えたことで、僕が出演することになりました。

 過去の公演で、声が大きくて暑苦しい軍事オタクの役を演じたことがあったのですが、それをイメージして奥村が書いてくれたようです。正直、ここまで多くの方に受け入れられるとは思いませんでした。

●グループのはしにいそうな『くれなずめ』の役柄

――そして、最新出演作となる『くれなずめ』は、「ゴジゲン」が17年に上演した舞台の映画化となります。「演劇版」で演じた勇作(ネジ)を「映画版」でも続投したことに関しては?

 やっと松居から声をかけられて、俳優として嬉しいし、光栄でしたが、第一線で活躍されている俳優の中にいることのプレッシャーは、ハンパなかったです。

 だから、撮影期間は「俺はNG出せないぞ!」という気持ちでいっぱいでした。

 みなさんからは、自分から発信して演技するというよりも、相手から発信してきたものに反応するように演技する、という基礎も教えてもらった気がしますし、ストイックにお芝居をされている姿に影響は受けました。

――『くれなずめ』における目次さんの見どころは?

 6人も集まると、面白い奴とかカッコいい奴とかいると思うんですが、あくまでもネジははしっこの奴なんですよ。一人だけ地元に残って、実家のネジ工場を継いでいる。だからこそ、共感してくれる人も多いキャラだと思います。

 そんななか、過去の大学時代を振り返った、成田 凌さんと藤原季節さんとのシーンがいいんです。何気ない日常を切り取ったシーンなんですけれど、自分の学生時代の雰囲気を思い出したほどでした。

――どのような俳優になりたいか、など、今後の展望を教えてください。

 これからも作品に対する姿勢は、松田優作さんのようでありたいと思っています。

 こないだ、作・監督をした「はたらかないせんとうき」という無観客舞台の配信(STAY HOME MINI-THEATERにて5/9まで配信中)を始めたんです。

 擬人化した戦闘機のおじいさんと若者の話なんですが、今後は小・中学生など、若い世代に向けての作品を、彼らと一緒に作っていきたいです。

目次立樹(めつぎ・りっき)

1985年10月29日生まれ。島根県出身。2006年慶應義塾大学の演劇サークルで出会った松居大悟とともに、「劇団ゴジゲン」を旗揚げ。11年からの3年の休止期間を経て、現在も看板役者として活動中。20年『アルプススタンドのはしの方』に茶道部顧問・厚木先生役で出演。

映画『くれなずめ』

吉尾(成田 凌)、欽一(高良健吾)、ネジ(目次立樹)ら、高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間が、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集う。その後、二次会までの時間を持て余しながら、彼らは高校時代の思い出を振り返っていく。
https://kurenazume.com/
4月29日(木・祝)テアトル新宿ほかにて、全国公開
©2020「くれなずめ」製作委員会

Column

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2021.04.23(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖
ヘアメイク=武部千里
スタイリスト=小笠原吉恵(CEKAI)
衣裳協力=KOH'S LICK CURRO