高校の帰宅部仲間の男子6人が、友人の結婚式に参加するために5年ぶりに集まることから始まる映画、『くれなずめ』。前田敦子さんは男子たちの同級生のミキエを演じ、強烈なインパクトを残している。
NODA・MAP初参加となる『フェイクスピア』への出演も決まり、連続ドラマと連動した映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』も公開中。
2021年1月には長年所属した事務所を退社してフリーになり、プライベートでは2019年に一児の母に。公私ともに変化し続ける前田敦子さんにインタビューを行うと、変化を恐れないのではなく、同じ場所に立ち止まるという発想がない、彼女の本質が見えた。
男の子っていつでも10代に戻れる。それはなかなか女子にはないこと
――4月29日(木・祝)公開の映画『くれなずめ』と公開中の『バイプレイヤーズ~』は、どちらも監督が松居大悟さんですが、『くれなずめ』の方が先の撮影ですよね?
そうです。監督とは『くれなずめ』が「はじめまして」でした。監督からオファーをいただいた時に、「僕は前田さんがいいと思っていますが、他にも何人か候補がいます。誰にお願いするかをキャストのみんなと決めたいから、もうちょっとだけ時間をください」と言われたんです。
――正直ですね!
そうなんです。監督がそのあたりを包み隠さずお話ししてくれたので、2週間後に「お願いします」と電話をいただいてすごく嬉しかったです。
私が撮影に入った時点で、メインキャストの男の子たちはすでに結束していたんですけど、みんなが私を選んでくれたという安心感があったので、すごく入りやすかったです。
――前田さんが演じるミキエは結婚式の他、彼らの回想シーンにも登場します。“キレキャラ”なので、瞬発力が必要な役ですよね。どのようにあのテンションに持っていったのですか?
今回は“順撮り”(ストーリーの時間経過の通りに撮影すること)で、高校時代のパートからの撮影だったので、初日に成田凌さんにビンタするシーンがありました。監督がビンタにものすごくこだわって、成田さんを20回くらい叩いたおかげで「あ、これくらいの勢いとパワーが必要なのか」と確認できました(笑)。
ミキエは登場するたびにキレるので、観客から「またか」と思われないかがちょっとだけ心配でしたが、同じ時空で何度もキレるわけではないから大丈夫かなと。“高校時代” “5年前” “現在”という違う時代にキレるので、登場人物の年齢が変化している中で、ミキエは「変わらずにキレている人」なんですよね。これくらい強い女の子じゃないと、男の子たちの青春の記憶には残らないんだろうな、と納得できたので、監督の演出は間違いないなと思いました。
――年齢を重ねるにつれて、もじもじと丸まっていく男の子たちと、どんどん強くなっていくミキエの対比が鮮やかでした。
ミキエだけ、ちゃんと人生を進んでいますよね(笑)。男の子たちの時間の止まり方と、女子のどんどん先に進む感じの違いはあると思います。
――『くれなずめ』の男子6人は、前田さんの目にどう映りましたか?
男の子っていつでも10代に戻れるんだな、と感じました。それはなかなか女子にはないことだなと思います。今私は子供がいるので、話題の中心は子供について、特に子供の未来について話すことが多くなります。
――お子さんの未来のために、いろいろ決断しなければいけないし。
そうなんです。私はAKB48という大きな青春を送ったので、みんなと「あの時こうだったよね」と過去を振り返る話はもちろんできますけど、この映画の男の子たちみたいに当時と同じことをして盛り上がったりはしません。男女には、時の流れの捉え方の違いがあるように感じました。
2021.04.17(土)
文=須永貴子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=清水けい子(アレンジメントK)
ヘアメイク=菊地弥生(ひつじ)