自分では「これはやりたくない」「私はこうだ」というのは、絶対に決めたくない
――前田さんから見て、『バイプレイヤーズ~』で共演した50代、60代のベテラン俳優さんたちはどんな存在ですか?
仕事も人生も超楽しんでるなーって感じます。『バイプレイヤーズ~』のおじさまたちは生きる気まんまんで、止まっている感じがしません。「これからの人生、まだまだやることいっぱい!」という活力が漲っていて素敵です。
――わかります! 「まだまだ見てろよ」というハングリー精神みたいなものが、こちらにも伝わってきます。
みなさん、超楽しそうにアドリブをたくさん考えたりして、本当にすごかったです。同じシーンが多かった木下ほうかさんとは初共演だったんですけど、かなり面白い方でした。
「YouTube始めたの」とか言って、映画の本番中に自分のYouTubeの撮影をしてるんですよ! 自由ですよね。「全然誰も見てくれへんー」「再生数ヤバいんよー!」「あっちゃん見てよー」ってボヤキつつ、すごく楽しそうでした。
――(笑)。ドラマの『バイプレイヤーズ~』には、初登場時にどんな俳優なのかを解説するテロップが入ります。「前田敦子:主演でもバイプレイヤーでも大活躍」とありましたが、主演と助演についてのスタンスを教えてください。
よく質問されますが、主演も助演も関係ないと思っています。自分で場所を決めないほうが絶対に楽しいと思うので。
ただ、性格的にはどちらかというと、主役を支える役の方が好きかもしれないです。主役は作品の中心にドンっといなければいけないので、あまりにも自由すぎるのはよくないんだろうなと、いろいろな方をそばで見ていて思います。
助演はスパイス的な存在なので、遊べることが増える分、クオリティを求められる。だからこそ、やりがいがあると思います。
――『くれなずめ』のミキエはまさに強烈なスパイスでした。ミキエがブチギレるたびに笑ってしまいました(笑)。
ありがとうございます(笑)。
――前田さんが主人公を演じた『旅のおわり世界のはじまり』の黒沢清監督が、前田さんについて「容れ物として大きい。なんでも受け止める。でも、本人は絶対に変わらないという強さが立ち込める方。それはすなわち孤独でもある」と、主演俳優としての器の大きさと強さを絶賛していました。
嬉しいです。だから、自分では「これはやりたくない」「こういうのをやりたい」「私はこうだ」というのは、絶対に決めたくないし、これから何十年先もずっとそうだと思います。
――2021年1月に長年所属した事務所から独立したのは、チャレンジの幅を広げるためですか?
出産した時にいろいろ考えて、自分の子供の責任だけではなく、自分自身の責任も自分で持ちたいと思ったんです。人任せにするのは楽なんですけど、見えなくなってしまう部分がたくさんあるんですよね。でも、「こういう(芸能の)仕事だから、自分にはわからないことがあって当然だよね」となる自分が嫌で。今自分の足で立たないと、これからずっと土台がないまま生きていくことになって、多分後悔すると思ったんです。
当時の事務所の人に「1人でがんばってみたいんです」とさらっと相談したら、「え?」と面食らいつつも、「これからもがんばってねー」と送り出してくれました。まだ契約が残っている仕事もあるので、前の事務所の人に会った時に「『NODA・MAP』の仕事が決まったんですー」などの報告をすると、「良かったねー!」と喜んでくれます。ありがたいです。
――そして現在、作品選びやこのような取材のやりとりなど、すべての仕事を自分で管理しているんですか?
はい。すべて自分で判断しています。以前はマネージャーさんから「こんな仕事が来てますよー」と聞くところから始まったんですけど、今は「はじめまして」のところからやりとりをしているので、すごくちゃんと向き合えますし、ありがたさが増しました。
「こういう感じでメールを送ってくださっているんだな」ということも初めて知りましたし、どういう思いで自分にオファーしてくださっているのかがわかるので、感動しています。
2021.04.17(土)
文=須永貴子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=清水けい子(アレンジメントK)
ヘアメイク=菊地弥生(ひつじ)