初主演作となった『街の上で』に続いて、成田凌や高良健吾らと共演した『くれなずめ』が公開中の若葉竜也。NHK朝ドラ「おちょやん」で演じた小暮には“小暮ロス”というワードも生まれました。そんな彼が、一躍注目を浴びた『愛がなんだ』からの2年間を振り返ります。
●『愛がなんだ』のヒットから変わった考え
――2年前のインタビューの最後に、「『愛がなんだ』(2019年)は、自信に繋がった作品」と仰られていましたが、映画のヒットに伴い、自身の考えに大きな変化はありましたか?
『愛がなんだ』はあまり映画を観ない人、映画館に行かない人たちが、大勢映画館で観てくれた作品でした。そういうことから、「今後は映画好きな人に向けてだけ映画を作るのではなくて、もっとレンジを広くして、いろんな人たちに向けて作っていきたい」という気持ちになりました。それと同時に「映画好きな人のためだけに作っていたら、日本映画界は終わってしまうのではないのか」という危機も感じました。
――そして、その年の6月に30歳を迎えられました。
僕自身、16歳ぐらいから思想は変わっていないので、どこかピンと来ていません(笑)。30歳になったからといって、いいことが増えるわけでも、辛いことが増えたわけでもないですし。確かに、ヒゲの役は増えたかもしれませんが、ヒゲに関しては小道具程度にしか考えていませんし……。ただ、40代になったときに、「30代は楽しかったな」と思いたいので、いい年の取り方をしたいとは思っています。
●「役作りを頑張りました」ということに対する疑問
――その後、草彅剛さん、中村倫也さんらと共演された『台風家族』(19年)や、京都の学生寮が舞台の『ワンダーウォール 劇場版』(20年)などでは、どこか尖ったキャラクターを演じられました。
殺人犯や浮世離れした役を演じるにあたっても、根底にあるものは人間だと思っているんです。だから、普通の人の役と振り分けていませんし、分かりやすく演じようとも思っていません。どちらにしても人間というものは、とても複雑じゃないかと思うんです。
――クセが強いキャラが入り混じる群像劇において、自身はどのような立ち位置でいたい、立ち回りたいということは考えられますか?
いろいろ考えても、所詮こんな小っちゃな脳みそで考えたことにしか過ぎませんから(笑)。もちろん、セリフを覚えるような準備をして現場には行きますが、その場その場で、周りの芝居にリアクションを取ることが最善だし、素敵だと思っているんです。
なので、同じ時間を共有するため、ニュートラルかつ敏感な態勢で、現場にいたという感じです。「こんなに役作りを頑張りました!」というのは、聞こえはカッコいいかもしれませんが、「それが現場にとって最善か?」と言われたら、僕自身どこか疑問な部分があるんです。
2021.05.14(金)
文=くれい 響
写真=佐藤 亘