●10年来の友人、仲野太賀との関係

――2020年に公開された『生きちゃった』では、仲野太賀さんとの二人芝居が印象的でした。

 彼とは僕が17歳ぐらいのときに、内山理名さんが教師を演じられたドラマ「生徒諸君!」(07年)のときにクラスメイト役で出会って、それからお互いの家を行き来するぐらい、ずっと仲がいいんです。「こんなことにチャレンジしてみたい」という夢から、「なんで自分は選ばれないんだ」という嫉妬まで、いろんなものを共有してきました。ひょっとしたら、中身のない役者論とかも話していたかもしれません(笑)。

 なので、この映画で二人の関係性を作るというよりも、あの映画のセリフのやり取りにたどり着くまでに、10年以上かかったという気持ちの方が強いです。彼との関係性がなければ、あそこまで出しきれていないとも思います。

――『罪の声』(20年)では、出番は少ないながらも、キーパーソンとなる役柄を演じられました。このような、いわゆる大作に出演されることは?

 大作だからとか、自主映画だからとか、作品の規模によって、僕の気持ちの変化みたいなものはまったくないです。僕が重きを置いているのは、脚本の内容ですから。個人的に、あの映画のモデルとなった実在の事件に興味があって、関連書を読んだり、ドキュメンタリーを観たりしていた時期があり、「機会があれば参加したい」という気持ちだったところ、声をかけていただいたんです。あえて、差異といえば、弁当が豪華だということですかね(笑)。

●ピンとこなかった「おちょやん」での“小暮ロス”

――そして、『AWAKE』では吉沢 亮さんのライバルとなる寡黙な棋士・陸を演じられました。

 (新進棋士)奨励会に入っていた中学からの友人がいるんです。今でも週一ぐらいで会っているほど仲がいいんですが、彼の影響もあって、完全に勝ち負けしかない棋士の生き方に惹かれていたので、ずっと棋士の役をやりたかったんです。

それで今回お話をいただいたことで、プロデューサーにお願いして、友人に所作などの指導で参加してもらい、マンツーマンで、いろんなことを共有したんです。役者という、どこか曖昧な世界で生きる僕が棋士を体現できるのかというプレッシャーはありましたが、彼のおかげでコピーはできたと思っています。

――さらには、現在放送中のNHK朝ドラ「おちょやん」への出演。若葉さんが演じられた映画撮影所の助監督・小暮は視聴者の反響が大きく、一時は“小暮ロス”まで起きました。

 企画内容や主演の杉咲 花さんのお芝居に惹かれていたこともあり、「僕でよければ」と受けさせてもらいました。今まで「朝ドラ」を見たことがなかったこともあって、どこか実感がなく、影響力のスゴさみたいなものも良く分からなかったんです。だから、出て初めて、報道でのいろいろな反響に驚かされました。

 プライベートでヒゲを生やしてるからかもしれませんが、街を歩いて声をかけられるなんてこともありませんし、生活が激変したわけでもないので、「小暮ロス」と言われても、どこかピンときませんね(笑)。

――失恋キャラという意味では『愛がなんだ』のナカハラと重なる部分もある小暮ですが、自身と小暮が重なる部分はありますか。

 僕自身、過去に自主映画を撮ったりしていたので、小暮を人間として共感できる部分はいっぱいありました。あとは撮影所における居心地の悪さみたいなものも。小暮にはモデルとなる人物がいるのですが、「おちょやん」の製作陣が『愛がなんだ』を観ていたようなので、どこかインスパイアされた部分はあると思います。

 「これまでの「朝ドラ」ヒロインの初恋相手じゃないものを求めてキャスティングしました」と言ってくださいましたし、僕が演じるということは、ピュアでキラキラしたものではなく、どこかカッコ良くなりきれない生々しい人間臭さを求めていたはずですし。

~次回は最新出演作となる映画『くれなずめ』についても語っていただきます~

若葉竜也(わかば・りゅうや)

1989年6月10日生まれ。東京都出身。幼少から俳優として活動し、『葛城事件』(16年)では、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。20年のNHK朝ドラ「おちょやん」に出演するほか、近年は『愛がなんだ』(19年)、『あの頃。』(21年)、『街の上で』(21年)など、今泉力哉監督作に出演。

映画『くれなずめ』

吉尾(成田 凌)、欽一(高良健吾)、明石(若葉竜也)ら、高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間が、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集う。その後、二次会までの時間を持て余しながら、彼らは高校時代の思い出を振り返っていく。
https://kurenazume.com/
テアトル新宿ほかにて公開中
©2020「くれなずめ」製作委員会

Column

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2021.05.14(金)
文=くれい 響
写真=佐藤 亘