●柳楽優弥の作品を参考に挑んだ撮影

――撮影当時は絆星と同じ中学3年生でしたが、役作りのために参考にしたことは?

 内藤監督から「この作品を観ておいた方がいい」という話はありませんでしたが、雰囲気をつかむために、よく「似ている」と言われる柳楽優弥さんの『誰も知らない』と『ディストラクション・ベイビーズ』を観ました。特に『ディストラクション・ベイビーズ』ではいじめを受ける側のアクションを参考にさせてもらいました。

――ただ、撮影は内容とともに、かなり過酷だったのでは?

 初めての映画の現場でしたし、「やっと俳優として仕事ができる!」という喜びが大きかったです。その一方で、いじめる側から、いじめられる側へと転じていく絆星という役と向き合っていくうえで、そのギャップは精神的に辛いものがありました。例えば、教室の討論会のシーンで起こるガヤガヤした残響は、ずっと頭から離れないほどでした。

――そして、20年の劇場公開時には大きな話題を呼びました。そして、今年に入り「毎日映画コンクール」 スポニチグランプリ新人賞を受賞されたほか、「日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞」にもノミネートされました。

 自分の演技を評価されたことは、ものすごく嬉しいことですし、「やった!」という気持ちもありました。それに、受賞の知らせを聞いたのがクリスマスだったので、「最高のクリスマス・プレゼントじゃん!」みたいなノリもありました。でも、そのニュースを目にしたり、日を重ねるごとに、その喜びは今後の焦りや責任、プレッシャーに変わっていきました。

●人間味のある演技ができる役者に

――自身にとって、『許された子どもたち』はどのような作品になったといえますか?

 この映画の存在なしに、俳優になることはなかったと思うので、自分の原点だといえます。もし「上村 侑」という本を作るなら、この作品から始まるほどの名刺代わりともいえる作品です。

――今後の展望・目標を教えてください。

 映画でもドラマでも舞台でも、どこでも活躍できる俳優さんになりたいです。それ以上に、観た人に「こういう人いるよね」と言ってもらえる人間味のある自然な演技ができるようになりたいです。自分の魅力は濃い顔や目だと思っているので、表情だけで魅せる演技を研究しています。

――ちなみに、今後目標とする俳優は?

 すべてを悟ったかのようなお芝居をされているときの西田敏行さんとロバート・デ・ニーロさんが好きなんです。デ・ニーロさんの作品だと『マイ・インターン』のときの優しい目が、とても印象的でした。

上村 侑(うえむら・ゆう)

2002年11月2日生まれ。鹿児島県出身。17年、『許された子どもたち』出演者ワークショップに参加し、主演に抜擢。その演技が高く評価され、21年1月には「第75回毎日映画コンクール」スポニチグランプリ新人賞を受賞。CMやドラマでも活躍。

映画『許された子どもたち』

不良グループのリーダー絆星(上村 侑)は、同級生に対するいじめから彼を殺してしまう。警察に犯行を自供する彼だったが、母親の説得で否認に転じる。少年審判は無罪に相当する「不処分」の決定を下し、自由を得た絆星だが、世間からのバッシングが巻き起こる。
http://www.yurusaretakodomotachi.com/

4月25日に、Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタルも同日スタート)。
※商品によりそれぞれ特典映像の内容が異なります。

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・セルDVD→ワークショップ映像+短編、予告篇
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封入特典のブックレットはBD、セルDVD共通

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2021.04.09(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖