ドラマ「まんぶく」「いだてん~オリムピック噺~」などでのクセのない演技が逆に気になった、“昭和顔”俳優・前原滉。現在は話題のドラマ「俺の家の話」にも出演中。
小栗旬や綾野剛、田中圭らと同じ事務所に所属。「新たな引き出しが増えた」と語る、初主演映画『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』について聞いた。
●坊主が嫌で、サッカーを断念
――幼い頃からサッカーをやっていたとのことですが、始めたきっかけは?
小1の頃、近所に住んでいた友だちが少年サッカーチームに入っていて、彼に誘われたのがきっかけです。どちらかというと、野球の方に興味あったんですが……(笑)。中学ではサッカー部の部長をやっていたので、高校に入っても続けるつもりでした。
――それなのに高校に入って、サッカーをやめてしまった理由は?
坊主にしたくなかったんです。少年サッカーチームで知り合った親友とは「サッカーの強い高校に入って、全国大会に行こう!」と約束していたんです。でも、同じ高校に入ったものの、結局反故にする感じになってしまって。最終的に彼はキャプテンとして、約束通り全国大会に出場したんですが、それを目の当たりにしたので「今後は後悔せず、やりたいことをやろう」と思うようになりました。
――そして、俳優を目指すようになったきっかけは?
高校3年のときに、母親と一緒に舞台「ビロクシー・ブルース」を観に行ったのがきっかけです。芝居にはもともと興味があったのですが、主演の佐藤隆太さんを始め、キャストのみなさんが楽しそうに演じられていたことに心を打たれたんです。それですぐに母親に相談して、高校卒業後は今の事務所(トライストーン・エンタテイメント)の俳優養成所に入所することを決めました。
●お茶の間で注目された「まんぷく」の“塩軍団”
――それから、2015年に事務所所属が決まるまで、4年近くかかりますね。
最初の1年間は、地元・仙台でバイトをしながら、週1回のレッスンを受けるために夜行バスで上京していました。翌年の12年に上京したのですが、なかなか結果が出ないし、所属するかどうかをマネージャーさんが決める「マネージャー・オーディション」の声もかからないので、14年にはもうやめようと思いました(笑)。
でも、その年の「マネージャー・オーディション」の補欠に入ることができて、なんとか正式に事務所に所属することできたんです。ただ、所属が決まる前に、映画『S-最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』のオーディションを受けて、テロリスト役をいただいたんです。
――その後、17年に菅田将暉さんが主演された『あゝ、荒野』では、不気味な「自殺研究会」のカリスマリーダー・川崎を演じ、一気に注目されます。
映画やテレビの関係者の方に知っていただくきっかけとなった作品になりましたが、あれは最初、『何者』でお世話になったキャスティング・ディレクターの方から「ヒロイン役を決めるオーディションで、菅田さんが演じる主人公の代役をやってほしい」というお話だったんです。
それで会場にいらっしゃった岸善幸監督が、僕を川崎役に抜擢してくださったんですが、聞くところによると、別日にはほかの方が菅田さんの代役をされていたんです。つまり、ヒロインと同時に、川崎役のオーディションも兼ねていたみたいなんです(笑)。
――その後、ご自身にとって転機となった作品は?
いろんなことの積み重ねだと思いますが、やはり『何者』からの『あゝ、荒野』の流れが大きな転機ではないでしょうか。その後は、“塩軍団”の一人である小松原を演じたNHK朝ドラ「まんぷく」ですね。
20代後半から30代のいろいろな経験をしてきた“塩軍団”は、表向きはギラギラ、ガツガツしていないけれど、本番になると何かが違うというか、常にオトナの戦い方をしてる感じが、とても刺激的でした。
そして、最近ではマンション管理人の蓬田を演じたドラマ「あなたの番です」が、転機になった作品だと思います。
2021.03.26(金)
文=くれい 響
写真=末永裕樹